「南澤さん、新規顧客をリピーターに変える最良の方法は何だと思いますか?」―――これは、かつてご支援をした美容院の経営者の質問でした。
彼のお店では、初回限定クーポンなどを用いて新規顧客を引きつけていました。毎月一定数の新規顧客が来店するものの、なかなかリピーターになってくれないとのことでした。
そして、リピーターにするための施策として王道とも言える「次回予約」の仕組みに関しては、その時点では取り組んでいませんでした。
その後、経営者の店舗では、次回予約の仕組みを導入することによって、リピート率を劇的に向上させることに成功しました。結果的に、予約率が50%以上も増加し、客単価も約20%アップしました。このような仕組みにより、初回クーポンの価値が高まり、活きるようになったのです。
リピーターにするための仕組みがあって、初回クーポンのような施策が効果を発揮します。このケースでは、そもそも施策の順序が誤っていたと言わざるを得ません。しかしながら、この問題は特定の店舗に限ったことではありません。
他にも、かつてご支援した歯科医院においても同様に次回予約の仕組みがありませんでした。この歯科医院でも、次回予約の仕組みを導入することによって大きな成果を上げることができました。次回予約は限りなく100%に近い状態をキープしています。
また同様に、自動車販売店においても、車検や点検などの次回予約の仕組みを導入することで実際に大きな成果を上げています。売上向上と同時に、仕事の平準化と効率化を実現することができています。
このように、さまざまな業種・業界で、リピーター化の仕組みがない状態で、プロモーション費用が無駄になっています。
また、当然ながら提供するサービスそのものがしっかりと回っている必要があります。製品やサービスの質が高く、それ自体が良くなければ、リピーターは育ちません。
このように、製品・サービスの提供価値が高いこと、そして、リピーターにするための仕組みがあってリピーターにする確率が高まります。
そして、圧倒的に高いリピーター率を実現するためには、さらにもう一歩進める必要があります。そのヒントは「先行受注」です。
次回予約の「予約」から、私が提唱する「先行受注戦略」へと発展させなければなりません。「先行受注」は単なる「予約」ではありません。
「先行受注戦略」では、顧客との関係性を強化することを意図しています。この点については、「予約」とは大きく異なります。顧客との関係性を強化するという視点が極めて重要となります。
逆を言えば、そのような視点がない「先行受注」は単なる「予約」の域を出ることはできないということになります。「先行受注」と「予約」は異なります。
先行受注はあらゆる業種・業界に有効ですが、特に効果が高いのが、自動車、不動産、保険、旅行、高級家具、高級服、高級品を扱う店舗、販売店、ディーラーなどです。
特に、買い替えサイクルが長い商品は、買い替え時期を短縮することによって大きな成果を出すことが可能となります。
この戦略では、顧客が次回も必ず購入することを前提としてすべてを計画します。つまり、逆算の視点から全ての戦略が練られているということです。こうして、圧倒的なリピート率を実現する道が開かれます。
次回も必ず購入すること、「圧倒的なリピート率を実現するためにどうしたら良いか?」を起点として、さまざま施策を考えていきます。
初回の接触である、初回購入時、初回のサービス提供時が全ての起点です。ここから全てが始まると言っても決して過言ではありません。
しかしながら、多くの店舗では、この初回対応の重要性が低く評価されがちであり、意識が低いと言わざるを得ません。リピート化の成否はここにかかっています。それらを実現するための戦略、具体的な施策が必要であると店舗経営コンサルタントの私は考えます。
また、圧倒的なリピート率を実現するためには、継続的な顧客とのコミュニケーションが不可欠です。前回のコラムでお伝えした「絶妙な距離感」を保つ必要があります。
さらに、それらを実現するためには、実行するための人材が必要です。一部のスタッフだけが理解して取組むだけでは大きな効果が得られません。そのためには、全員が自発的に協力する風土・文化を醸成し、底上げを実現する必要があります。
ここでいう実行するための人材は、単に実行するだけでなく、環境変化に対応して改善できる人です。そのような人材を育成するためには、当然のことながら人材育成の仕組が必要です。
このように、逆算の視点ですべてを考えて実行する必要があります。一つの施策を実行するとしても、さまざまな要素が複雑に絡んできます。
当社が推進する「ストック型営業」の仕組みでは、顧客との関係性を強化する「先行受注戦略」を大きな柱としています。先行受注を意図的に積み上げることで、将来の売上・利益を確保する戦略です。
仮に現在、そのような仕組みがなくても、今後具体的な取り組みを考え、実行することで、圧倒的に高いリピート率を実現できるはずです
貴社では、顧客との関係性を強化し、圧倒的なリピート率を実現するために、どのような戦略や仕組みを考えていますか?