第102話:転売目的のお客様から学ぶ「真のストック」の意味

 

「南澤さん、正直…このお客様に売るべきかどうか、悩むんです」ーーーとある自動車販売店の店長が、グループコンサルティング後に一杯やっていた時に漏らした言葉です。

 

相手は特別限定車を予約した顧客。しかし、その様子からは“長く乗るつもり”がまったく感じられません。どう考えても転売目的。

 

売上は上がるが、関係は積み上がらない

確かに転売目的の顧客は、その場の売上に貢献します。数字上はプラスです。ただし、そこには“継続性”がない。将来の収益につながることはほぼありません。営業担当者なら、一度は頭を抱えるテーマでしょう。

 

ここで浮かび上がるのが、売り切り型の「フロー型」と、積み重ね型の「ストック型」の違いです。

フロー型 …販売の瞬間に関係が終了する。再接点はなく、積み重ねも生まれない。

ストック型 …販売後のやり取りが資産化され、長期的な収益を生む。

 

自動車販売は本来、後者の「ストック型」で成り立つビジネスです。販売自体の利益は限定的。むしろ本当の収益は、その後の繰り返しの接点からやってきます。

 

具体的には―――

・車検・点検・修理

・保険契約の更新

・紹介による新規顧客の獲得

・次回の買い替え

こうした積み重ねこそが「顧客生涯価値(LTV)」を高め、事業を安定させる“真のストック”なのです。

 

「ストック型営業」とは何か

南澤自身が提唱する「ストック型営業」は、単なる販売件数の積み上げではありません。むしろ「顧客との関係そのものを資産に変える」ことに主眼を置いています。

 

重要なのは、一件一件の販売を終点ではなく、次につながる入口と捉える発想です。

売上という結果を得た瞬間に関係が終わるのではなく、

「このお客様は将来、どれだけの価値を生む可能性があるか」

「どのように接点を育てれば、次につながるのか」

を考え続けること。

この営みこそが「ストック型営業」の本質です。

さらに特徴的なのが「先行受注を意図的に積み上げる」仕組み。

 

たとえば3年後の受注を前倒しで確保できれば、未来の売上が計画に組み込まれます。結果として顧客の心理には「次もここで買う」とロックがかかる。これもまた、“真のストック”を築く有効な仕掛けです。

 

要求水準が高い顧客との向き合い方

転売目的の顧客に限らず、「この方に販売して良いのか」と迷う場面は少なくありません。

要求が極端に高く、トラブルの火種になりそうな顧客は、どの業界にもいるものです。

 

経験上、このような顧客には大きく二つのタイプがあります。

・要求に応えることで良い顧客へ成長するタイプ

こちらの対応を評価し、「できること・できないこと」を理解したうえで、妥協点を探れる。結果的にサービス水準を高め、改善のきっかけを与えてくれる存在になる。

 

・一方的に要求を積み重ねるタイプ

どれだけ応えても満足せず、さらに要求を繰り返す。関係が深まるどころか、負担ばかりが増え、資産にはならない。

 

前者は確かに手間がかかりますが、やがては会社を支える大切な顧客に育ちます。

後者は、中長期的に見れば“取引しないほうが健全”とすら言えるでしょう。

 

営業に必要な二つの力

ここで営業に求められるのは二つの力です。

 

見極める眼 …顧客がどちらのタイプなのかを早い段階で判断する力。

 

育てる仕組み …前者の顧客を長期的な資産に変えていくプロセス。

 

では「育てる」とは具体的に何を指すのか。

単に顧客の要望を聞き続けることではありません。むしろ「できること・できないこと」をはっきり示しつつ、納得感を得られるよう調整する姿勢が欠かせません。

 

一例として、無理な納期を求められたとき。

「今回はここまでが限界ですが、次回はこうすれば可能です」といった対話を積み重ねれば、顧客も学習し、信頼も深まっていきます。

 

さらに実践的な例を挙げるなら―――

・定期点検の際に、次回の車検予約まで先に取ってしまう

・顧客のライフイベント(結婚・子どもの進学など)を把握し、最適な提案時期を逃さない

こうした一歩先の工夫が、顧客を資産に育てるヒントになります。

  

売上は一時的に上がっても、将来の収益を削り取るような顧客であっては意味がありません。

むしろ、数字に出にくい「関係の積み重ね」こそが、最終的に安定した売上を生むのです。

 

貴社の営業スタッフは、中長期的な関係を築ける顧客を見極められているでしょうか。

そして、その顧客を“育てる”ノウハウを持ち、日々実践できているでしょうか。

 

「真のストック」とは、単なる数字の積み上げではありません。

顧客との関係を資産へと変える営み。そこにこそ、「ストック型営業」の真価があるのです。

著:南澤博史

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