第100話:「目標到達点」と「通過点」

 

「南澤さん、中期経営計画を立てる時の目標についてですが、5年後の目標なんて一体どうやって考えればよいのやら…」―――これは、自動車販売を営んでいるクライアント先の経営者の言葉です。

 

近年では、中期経営計画の立案自体をやめる大企業も出てきていますが、それでも多くの企業では、未来を見据えて中期経営計画を策定しています。

 

一方で、小規模事業者や中小企業においては、1年間の事業計画は立てていても、3年先、5年先の中期的なビジョンを明文化しているケースはまだ多いとは言えません。計画があればまだ良い方です。

 

中期経営計画の策定には、十分な意義があると南澤は考えています。実際にこれまで、そうしたご支援も行ってまいりました。

 

「計画なくして実行なし」とはよく言われる通り、計画がすべてではないにしても、計画がなければ行動は疎かになりがちです。

 

かつて営業時代を振り返れば、前日には必ず翌日の計画を立てていましたが、計画通りにいくことはまずありませんでした。しかし、計画がなければ、もっと上手くいかないのです。

 

なぜなら、計画がなければ途中の軌道修正ができないのです。うまくいっていないことに途中段階で気づくことができません。これについては、短期の計画であろうが中長期の計画であろうが同じです。

 

とはいえ、「3年後や5年後のことなんて、予測できるわけがない」と感じている経営者が多いのも事実です。目先の業務の忙しさに、正直なところそんな時間は取れなくなりがちです。

 

そこでまず確認したいのは、「予測」と「構想(計画)」は違う、という点です。未来を正確に予測することは誰にもできませんが、未来を構想(計画)することは、今この瞬間からでも始められるのです。

 

たとえば、1年後の目標を立てる場合、少し背伸びをした「挑戦ゾーン(ストレッチゾーン)」に設定することが一般的です。頑張れば達成できそうなラインを狙いにいくわけです。

 

一方で、3年後〜5年後の目標については、今の延長線上にはない「混乱ゾーン(パニックゾーン)」に思い切って置きにいく、という考え方もあります。南澤自身は、あえてこの方法を推奨しています。

 

それは、現時点では到底手が届かないような高い目標となります。しかし、それを現実から乖離しているからと排除するのではなく、「あえて遠くに置く」ことで、今何をするべきか、どんな力が足りないのか、どんな考え方を転換すべきかを考え始めることができるのです。

 

もちろん、あまりに現場の感覚とかけ離れた目標設定は、かえって士気を下げてしまう危険性もあります。

 

だからこそ重要なのは、「大きな目標をあえて掲げる」というトップの決意と同時に、それを分解し、現場にとって意味のある小さなステップへと翻訳する力です。経営者の「思い」を伝える能力が試されるのです。

 

「遠いけれど、つながっている―――」と現場が納得できる道筋を示すことで、挑戦は現実味を帯びていくのです。

 

そして、高い目標であるその領域には、決して現状の延長線上で到達することはできません。そのため、新しい発想が求められるのです。これまでの延長線上にはない、従来にない発想…。。

 

これは、経営者にとっては、重要な視座の切り替えです。目標を「現実からの積み上げ」で考えるのではなく、「理想からの逆算」で構想するーーーこの逆算思考の方法が、現場を変え、組織を変え、未来を変えていきます。 結果的に、組織・チーム・個人のモチベーション向上につながります。

 

南澤が提唱する「ストック型営業」も、まさにこの考え方が基盤にあります。目先の成果だけでなく、未来の受注を見据えて行動する。

 

“3年先の売上を意図的につくる”というストック型営業の考え方。それは単なる手法ではなく、「通過点思考」の実践でもあるのです。

 

そのためには、納車や契約といった一つひとつの成果を「目標到達点」として扱うのではなく、「通過点」として捉える視点が求められます。

 

たとえば、南澤自身がかつて携わっていた自動車販売の現場では、受注から納車までの流れが一つの「ゴール」として扱われていました。

 

しかし、本来であれば納車はスタート地点のはずです。そこから定期的なフォローが始まり、次の車検や乗り換え、紹介などへとつながっていく。目標のその先に目を向けられる営業こそが、真に信頼される営業担当者なのです。

 

こうした「通過点」の考え方は、営業現場だけでなく、組織のあらゆる活動にも通じます。たとえば、人材育成においても、あるスキルを習得することが目的ではなく、そのスキルを使って新たな価値を提供することが本質です。

 

つまり、何かを「できるようになる」ことは通過点であり、その後にどんな成果や影響を生み出せるかが、本当の意味での目標なのです。

 

南澤がかつて会社員時代に取得した「中小企業診断士」の資格も、単なる「通過点」でした。しかしながら、この資格を「目標到達点」としている人も、残念ながら多いのが事実です。

 

そのような考えの方は、残念ながらその資格を本当の意味で活かすことはできません。「通過点」と考えている人のみが、真に活かしています。

 

昇格や昇進、役職・役割の変化も同じです。「目標到達点」と考えるのか「通過点」と考えるかで、その後の成果が大きく変わります。

 

また、この「通過点」という発想は、個人の成長だけでなく、組織学習の文化にも大きな影響を与えます。

 

目標をゴールではなく「学びの出発点」と捉えることで、達成した瞬間に終わるのではなく、「その次に何をすべきか」という問いや行動が自然と生まれます。

 

こうした姿勢が“組織学習”を促進し、結果として、持続的な成長サイクルを職場に根づかせていくのです。

 

「通過点思考」は一人ひとりの視点にとどまらず、やがて組織全体の文化に変わっていきます。「達成して終わり」ではなく、「達成から何を学ぶか」という「通過点思考」が日常に組み込まれたとき、組織は真の意味で学習する集団へと変わるのです。

 

このような発想を広げていくと、今の取り組み一つひとつが、未来にどうつながっていくのかという視点が育ちます。今やっている「仕事の意味づけ」が変わると、行動の質も確実に変わっていきます。

 

古典『大学』にも、「先ず其の大なる者を務むるは、其の小なる者を務むるに由る」とあります。

 

つまり、大きな目標に取り組むには、小さな実践の積み重ねが不可欠だということです。大きな志を抱きながらも、地道な日々の行動を積み重ねる。その継続が、目標に至るための最短距離となります。そして、その努力が終わることはないのです。

 

手前みそですが、このコラムも、ついに第100話を迎えることができました。毎週の積み重ねがここに至ったのです。そしてこれは、ひとつの「到達点」でありながら、あくまでも「通過点」にすぎません。ここから、また次の100話が始まります…。

 

南澤が目指すのは、“現場に変化を起こすこと”であり、“経営者やリーダーの皆様とともに、組織の持続可能な成長を生み出すこと”です。その実現のために、これからも歩みを止めるつもりはありません。

 

貴社では、「目標到達点」を「通過点」として捉える視点が育っていますか?

そして、遠くの未来から逆算して、今何をすべきかを見極める力が、組織に根づいていますか?

  

「目標」とは、単なる「通過点」にすぎません。
だからこそ、今この瞬間から――ー未来へ向けた「一歩」が始まるのです。

 

そして、あなた自身にとって――ー
今、目指しているその目標は、「通過点」ですか?それとも、そこで立ち止まってしまいますか?

 

著:南澤博史

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