
「南澤さん、うちの若手が何度教えても同じところでつまずくんですよ…」ーーーこれは、ある製造業の部門長が、少し困り顔でこぼした言葉でした。
何度も同じ説明をし、そのたびに期待しては肩を落とす。そんな“もどかしさ”が声のトーンからも滲み出ていました。
実のところ、この種の相談は後を絶ちません。「何度言ってもできない」「同じミスばかり」。部下を持つ立場になれば、必ず一度は直面する悩みだと思います。
さて、この問題。
結局のところ どちらが悪いのでしょうか?
南澤自身は、ほぼ例外なく 「上司に原因がある」 と考えています。
研修の場でこの話をすると、管理職の皆さんからは苦笑いやため息も漏れますが、それでも一貫してお伝えしてきました。
もちろん、部下側に全く問題がないわけではありません。
ただ、改善しやすいのは “上司の指導方法のほう” であり、組織としては「変えやすいところから変える」ほうが、どう考えても合理的なのです。
■視点を変えると“見える景色”が変わる
「何度言ってもできない」というのは、上司側の視点です。
では、部下から見える景色はどうなっているのか。
・「何度できないと言っても同じ説明しかしない上司」
・「言葉の意味が曖昧で、腑に落ちる前に次へ進んでしまう上司」
・「なぜ失敗したのか一緒に考えず、“気をつけろ”だけで終わる上司」
部下が見ている姿は、案外こうしたものだったりします。南澤自身、若い頃は決して器用ではありませんでした。
上司の説明を何度聞いても「どこがわからないのか、わからない」。そんな状態で悶々とした経験もあり、心細さを感じたことも多かったのです。
だからこそ、“できない側の景色”の不安や戸惑いが、今でもよく思い出されます。上司からは“できない部下”に見えても、部下からは“伝わらない上司”にしか映っていないことがある。
このギャップこそが、現場で起こるすれ違いの本質だと感じています。
■できない理由は「人」ではなく「方法」にある
もし、“何度やってもできなかった部下”が、別の上司の説明で急にできるようになったらどうでしょうか。
答えは明白です。
「部下の問題」ではなく、「指導方法」に問題があったということになります。
伝わらないのであれば、伝え方を変えるしかありません。
・言い方を変える
・書いて説明する
・図にする
・動画を使う
・一緒にやって見せる
・ときには雑談の中でさらっと補足する
方法はいくらでもあります。
特に今の若い世代は動画やビジュアルで情報を受け取ってきた世代です。
言葉だけで伝わるほうが珍しいと言ってもよいでしょう。
「前にも教えたけど…」
そう喉まで出かかった瞬間こそ、自分の指導方法を見直すサイン です。
■“気づいた時点で”指導レベルが試されている
少し耳が痛いかもしれませんが、「何度言っても」と感じた時点で、指導レベルは高いとは言えません。
ただし、これは能力ではなく 思考の問題 です。
上司が「できない部下」を責めるのは簡単です。けれども、それではチームはまとまりません。
南澤自身の経験から、強いチームには一つ大きな共通点があります。
それは、
「自責思考が文化として根づいている」 ということです。
・自分の伝え方に改善点はなかったか
・もっと理解しやすい工夫ができたのではないか
・ミスを防ぐ仕組みを整えられなかったか
こうした問いを自分に向けられる人が増えるほど、チームの成長は加速します。
■強いチームは“自責の文化”でまとまる
何度言ってもできないーーこの瞬間に、チームの文化が表れます。他責思考のチームは、誰も自分事として考えず、常に“他人のせい”を探します。
一方で、「自分にできることはなかったか?」と一歩踏み込むメンバーが一人、また一人と増えていくチームは、成長スピードが桁違いです。
■仕組みが“人を育てる”
とはいえ、精神論だけでは組織は変わりません。
自責思考を浸透させるには、仕組みが必要 です。
・繰り返し練習できる環境
・手順や基準の見える化
・振り返りの習慣化
・管理職の体系的育成
例えば、新人指導では「最初の3回は横で見守る」というルールを設けるだけでも、指導品質のバラつきは大きく減ります。
これは精神論ではありません。再現性の問題 なのです。南澤が推進する「全員参加底上げ型」の仕組みも、この考え方が土台です。
“できない人を責める”のではなく、“誰でもできる方法”を組織としてつくること が重要なのです。
■最後にーー貴社ではどうでしょうか?
「何度言ってもできない部下」
しかし、その裏側には、
“何度言っても同じ伝え方しかしなかった上司”が隠れているのかもしれません。
組織を強くするのは、教えられる側ではなく、教える側の思考と姿勢です。
まずは、今週どこかで「指導方法を一つだけ変えてみる」時間を取ってみてはいかがでしょうか。
小さな一歩の積み重ねが、やがて“強い組織”をつくります。
さて、貴社では
指導方法を点検し、自責の文化を育てる仕組みは整っていますか?
著:南澤博史
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