第105話:折れない心のつくり方 ~身近なストレス対処行動~

  

「南澤さん、元気だと思っていた社員の一人が、急にメンタル不調で休むことになってしまったんです。正直、まったく予想していませんでした…」ーーーこれは、製造業を営む経営者からいただいたご相談の言葉です。

 

近年、職場でのメンタル不調は珍しいものではなくなりました。普段は明るく振る舞い、誰よりも元気そうに見えていた社員が、ある日突然出社できなくなる…。経営者や管理職にとっては「まさか」という出来事です。

 

しかし実際には、完全に突然ではありません。多くの場合、ずっと前から小さな変化が現れています。表情が硬い、口数が減った、行動が少し雑になった…。身近に接していれば気づけるサインだったはずです。

 

■ストレスの二つの側面

「ストレス」とひとくくりに言っても、実は二つの顔があります。

 

一つは原因そのもの、つまり「ストレッサー」。もう一つは、それによって心や体に出てくる「ストレス反応」です。

 

たとえば顧客からの厳しいクレームや、職場の人間関係の不和はストレッサーです。そこから不眠や頭痛、気分の落ち込みといった反応が出るのがストレス反応です。

 

このストレッサー自体を完全になくすのは難しい。だからこそ「どう受け止め、どう和らげるか」が重要になります。心理学で言う“ストレスコーピング”です。

 

■ストレスコーピングの4つの方法

1.エクササイズ(運動)

軽いランニングやウォーキングは、ストレスホルモンを分解し、運動後はリラックスをもたらします。忙しい人は「エスカレーターではなく階段を使う」だけでも効果があります。

 

2.リラックス

アロマやマッサージ、音楽、読書、温かい飲み物…。人によって心がほぐれる方法は違います。お金や時間をかけずに「短時間でも落ち着ける自分なりの習慣」を持つことが大切です。

 

3.ストレッサーの除去

部下がクレーム対応で疲弊していれば上司が巻き取る。人間関係が問題なら配置換えを検討する。原因を直接取り除く方法ですが、一人の力では難しいため、周囲の協力が欠かせません。

 

4.認知の修正(リフレーミング)

同じ出来事でも「捉え方」を変えれば感じ方は大きく変わります。困難を「自分を苦しめるもの」と見るのか、「自分を鍛える機会」と捉えるのか。この違いが折れやすさを左右します。

 

■「勝手な決めつけ」から自由になる

ここで思い出していただきたいのが、第65話「ものの見方や考え方を変える方法」です。 → https://minamisawa-consulting.jp/tzj1

 

人は先入観から「どうせ無理だ」「きっと失敗する」と決めつけてしまうことがあります。この勝手な決めつけが、ストレスを余計に増やし、心を折りやすくしてしまいます。

 

有名な「靴を売る人の話」があります。裸足で暮らす人々を見て「靴は売れない」と判断する人もいれば、「無限の可能性がある」と考える人もいる。同じ状況でも、ものの見方一つで行動も結果もまったく違ってしまうのです。

 

ストレスの場面でも同じです。顧客から厳しいクレームを受けた時に「自分を否定された」と捉えれば心は折れます。しかし「改善のヒントをもらえた」「成長の機会だ」と捉え直せば、前向きな行動につながるのです。

 

これこそが認知の修正、リフレーミングです。

 

■古典に学ぶ「捉え直す力」

古典にも同じ考えが示されています。『中庸』には「射は君子に似たり。諸れを正鵠に失すれば、反って諸れをその身に求む」とあります。

 

矢が的を外れた時、風や弓のせいにせず、自分を省みよという意味です。外的要因を責めるのではなく、学びの機会とする。これはまさにリフレーミングの実践であり、折れない心を育てる思考法です。

 

南澤自身が店長時代に意識してきた姿勢でもあります。

 

■予兆に気づく文化を育てる

個人が折れない心を持つことも大切ですが、同時に「周囲が気づけるかどうか」も重要です。

 

メンタル不調には必ず予兆があります。表情が硬い、遅刻が増える、会話が減る…。こうした小さな変化を見逃さないためには、管理職の目配りだけでなく、同僚同士の声掛けや日常的な対話が欠かせません。

 

南澤が店長時代に経験したのは、チーム全体で「お互いを気に掛ける雰囲気」がある職場ほど、大きな不調が少なかったということでした。これは偶然ではなく、組織文化の力だと実感しています。

 

■折れない心を育むために

折れない心は、生まれ持った資質ではなく、日常の小さな習慣と文化の積み重ねで形づくられます。

 

・運動やリラックスを習慣にする

・困難を成長の糧と捉え直す

・ストレスの原因を一人で抱え込まず分かち合う

・小さな予兆を見逃さない風土をつくる

 

これらの積み重ねが折れない心を支えます。

 

ストレス社会の中で、心の不調は誰にでも起こり得ます。だからこそ、一人ひとりが柔軟にものの見方を変える力を持ち、組織全体でサポートできる体制を整えることが欠かせません。

 

そして強調したいのは――ー

折れない心は特別な人だけのものではありません。考え方を少し柔らかく切り替えること、そして身近にできる小さな工夫を積み重ねること。それで誰もが折れない心をつくりあげることができるのです。

 

貴社では、社員が困難を成長の機会に変えられるような、柔軟な考え方や支え合いの文化が育っていますか?

 著:南澤博史

 

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