第75話:信頼関係構築の土台のつくり方

  

「南澤さん、メンバー同士のつながりが薄いと感じています。どうやって関係構築をしていったらよろしいでしょうか?」ーーーこれは、複数店舗を営む自動車販売店の経営者の一言でした。

 

このような悩みは、コンサルティングや研修の現場でもよく耳にします。近年、ハラスメントを警戒するあまり、社員同士が距離を置く傾向が強まっています。しかし、それが本当に良いことでしょうか?

 

信頼関係が薄れるリスク

実際には、メンバー同士がお互いの価値観や仕事観、さらに育児・介護といったプライベートの事情をある程度知っておくことで、互いに配慮しやすくなります。特に、上司や管理職がメンバーを深く理解することは、円滑なチーム運営に欠かせません。

 

ところが、ハラスメントへの過剰な警戒から「プライベートの話は一切しない」と極端な対応を取るケースも増えています。その結果、メンバー一人ひとりの価値観や個別の事情を把握できず、職場に無用なストレスが生まれることがあります。

 

円滑なチーム運営を考えた時に、メンバー一人一人の価値観や個別の事情を知らないことは、大きなリスクになります。

 

例えば、「残業代を稼ぎたいから残業したい」人もいれば、「プライベートを大事にしたいから定時に帰りたい」人もいます。こうした違いを把握せずに一律の対応をすれば、不満が蓄積し、信頼関係が損なわれかねません。

 

そのため、一人一人としっかりと話をした上で、個々の考え方などを把握しておくことが極めて重要になります。

 

1on1面談の落とし穴

近年、1on1面談を取り入れる企業が増えています。しかし、「面談をすれば関係が深まる」と考えるのは早計です。多くの企業では、面談が表面的な会話で終わり、肝心の本音を引き出せていません。

 

その原因は、大きく分けて二つあります。

1.上司、管理職の面談スキル不足

・部下の話を最後まで聴かない

・話を被せる、結論を急ぐ

・的確な質問ができない

→これを解決するには、上司や管理職に傾聴スキルを身につけさせる必要があります。社内研修や外部研修の機会を設けることが有効です。

 

2.信頼関係の土台ができていない

・そもそも上司に対して安心感がない

・「何を言っても変わらない」と思われている

・面談が単なる業務報告の場になっている

→こうした状況では、いくら面談をしても本音は出てきません。これが、多くの企業で定期的な面談を取り入れているのに、重要な話が何も聞けない原因です。

 

いずれにしても、面談の機会を設けることで、一人一人の価値観や仕事に対する考え方、個別の事情、プライベートを知っておくことが、お互いの人間性を知ることになり、信頼関係を構築することにつながります。それが、円滑なチーム運営につながっていきます。

 

信頼関係の土台とは?

では、どうすれば信頼関係の土台を築けるのでしょうか?

 

答えは実にシンプルです。日々の声かけとあいさつです。

 

「あいさつぐらい、やっている」と思うかもしれません。しかし、以下の要素を満たしたあいさつが、本当にできているでしょうか?

・笑顔:柔らかい表情で接する

・声のトーン・大きさ:明るく、はっきりと

・目を合わせる:相手に意識を向ける

・公平性:誰に対しても同じように接する

・一声加える:例「おはようございます。昨日のプレゼン良かったね!」

 

これらは、「承認」の最も基本的な形である「存在承認」にあたります。

 

信頼関係は「あいさつ」から始まる

適切なあいさつをすることで、日々の「認め合い」が生まれます。存在承認の積み重ねによって、信頼関係が構築されていくのです。

 

そのため、存在承認の積み重ねによる信頼関係がなければ、いくら面談で「成長承認」や「成果承認」をしたところで、期待する効果が得られません。

 

このように信頼関係を構築するためには正しい順番があるのです。日々のあいさつこそが、その土台を支えています。

 

そして、信頼関係のある組織・チームでは、コミュニケーションが活発になり、チーム運営もスムーズに進みます。

 

貴社では、信頼関係の土台を築けていますか?

当社では、信頼関係を深め、コミュニケーションを活発にするための仕組みづくりや、傾聴のスキルをはじめとする管理職育成の場を提供しています。

 

多くの企業が、これらの重要な課題について後回しにしがちですが、将来的に見てとても大きなリスクとなるのです。

 

貴社では、日々のあいさつを意識し、信頼関係構築の土台を築く仕組みを整えていますか?