第49話:ベテラン社員が力を発揮するには?

  

「南澤さん、当社のベテラン営業は、業績がパッとしません。他社のような優秀なベテラン営業を中途採用できないかと考えています…」ーーーこれは、売上の停滞にお悩みの経営者のご相談にのった時に出た一言でした。

 

この経営者に限らず、自社のベテラン社員の実績に不満を持つ経営者は実に多いです。そして、多くの場合、他社のベテラン営業が良く見えるのは幻想です。

 

仮に、優秀と言われる他社のベテラン社員を採用しても期待通りの結果は得られないでしょう。文字通り「隣の芝生は青く見える」だけです。

 

実際に、他社で成果を上げていたベテラン社員を採用しても、思ったほどの成果が上がらなかったという事例を私もこれまで見てきました。

 

そのような理由から、自社の内部の資源に焦点を当てて、最大の成果を発揮するように考えるのが最も効率的であります。つまり、自社のベテラン社員に最大限に力を発揮してもらうことです。

 

売上が停滞しているベテラン営業、ベテランの社員は決してやる気がないわけではなく、多くの場合は一定以上の士気を保っていると言えます。

 

ポジティブに捉えるのであれば、若いスタッフのような上下の激しい波はなく実に安定しているのです。気分によるムラは少ないため、一定以上の活動は行います。

 

しかしながら、マイナス要素としては、長年積み上げてきた習慣、やり方などによって、一定の活動によって一定の成果を上げることがしみついており、マンネリ化は否めません。

 

そして、残念ながら、新しいやり方、方法を試したがらない傾向にあります。ただし、決してやる気がないわけではありません。変なプライドが邪魔をしたり、面倒に感じたりすることが原因です。

 

そんなベテラン社員ですが、多くのノウハウを持っているのは事実です。若手スタッフが知らないノウハウなどを使い、効率的に仕事をしています。

 

例えば、顧客との信頼関係の築き方や、効果的なプレゼンテーションの方法、クレーム対応の方法など、多岐にわたるノウハウを持っています。これらのノウハウを活用すれば、業務の効率化や顧客満足度の向上に直結します。

 

そんなノウハウを、チーム全員で活用できれば良いのですが、特に成果を上げているベテラン社員に限って一匹狼的なタイプが多いのも事実です。

 

端的に言えば、ノウハウを共有したがりません。そして、そのようなノウハウは、傍から見ていてもよくわからないことが多いのです。

 

暗黙知の形式知化とよく言われますが、まさにこのベテラン社員のノウハウを形式知化して、共有できればチーム全体の力が底上げされる可能性が高まります。

 

若いスタッフからすれば、そんな方法があったのかと目から鱗が落ちるようなノウハウを持っていることも多いのです。

 

ノウハウの形式知化と共有は、企業にとって重要な課題です。暗黙知を形式知に変換するプロセスは、個々の社員の経験や知識を組織全体で活用できるようにするためのものです。

 

これは、若いスタッフが驚くような効果的な方法を持つベテラン社員にとっても、自身の価値を再確認し、モチベーションを向上させる機会となります。

 

ベテラン営業、ベテラン社員の重要な役割として、このノウハウの形式知化と共有を遂行できるかどうかが、チーム全体の力に大きな差を生みます。

 

これを実現するためには、そのような仕組みが必要であることは当然ながら、会社、組織としての企業風土・文化の醸成が必要です。

 

つまり、全員が協力する文化があって初めてそのようなことが可能となるのです。一匹狼で個人商店のように活動をしているベテラン営業のままでは、そのようなことは望めません。

 

一方、新人スタッフ、若いスタッフは、新しいことに取り組んだり、環境の変化に合わせて改善したりすることが得意です。

 

そのような、若いスタッフの新しいノウハウも重要です。ベテラン社員にとっても実はこのようなノウハウを習得できるかどうかで、成果に大きな差が生まれます。

 

ベテラン社員が若いスタッフから新しい技術や方法を学ぶことで、さらに成長し、組織全体の成果を上げることができます。

 

このような相互に学ぶ仕組みは、相互の信頼関係があって初めて成り立ちます。ベテランと若手が協力し、互いに学び合うことで、組織全体の力を引き上げることができるのです。

 

結論として、ベテラン社員の力を最大限に引き出すためには、企業としての取り組みが不可欠です。個人に頼っていては、大きな発展は望めません。

 

ノウハウの共有、協力体制の構築、そして新しい挑戦を奨励する文化の醸成を進めることで、ベテラン社員の経験と知識を活かし、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

 

貴社では、そのような協力し合う組織風土・文化を醸成していますか?ノウハウを共有できる仕組みを構築していますか?