第29話:顧客目線で考える

 

「南澤さん、自社のサービスを利用したことがない従業員がいるんです…。どう思いますか?」これは、あるクライアントの社長から聞かれたものです。これは深刻な問題を浮き彫りにしており、実に根深い話です。

 

そもそも、従業員が自社の商品やサービスを利用しないというのは、その製品への愛着や誇りの欠如を示唆するかもしれません。これは組織風土・文化の問題として捉えられるべきです。そして、最終的には顧客満足度の低下に直結します。

 

しかし、たとえ愛着がないにしても、顧客満足度を高めるには、製品やサービスを客観的に評価し、顧客の視点から考える必要があります。顧客目線での商品・サービス設計は、顧客の期待に応える上で非常に重要です。 

  

具体的な実現方法として、自社の製品やサービスを顧客として直接体験することが挙げられます。例えば、飲食店を例に取れば、顧客として店に入り、注文から料理提供までの一連のサービスを体験することです。

 

私自身、複数の飲食店を経営している知人と、その店舗で飲食をともにしたことがあります。このような場合、知人は顧客の立場で利用しながら、色々な気づきを得ているのです。顧客としての体験は、通常の運営からは見えにくい多くの改善点を浮き彫りにします。

 

店舗経営コンサルタントとして飲食店を支援する私自身の経験からも、顧客の立場でテーブルに座るだけで、驚くほどに実にさまざまな気づきが得られます。お店に入った時の印象、テーブルに着いた時に感じること、普段お店をまわしている目線で見るのとまったく異なり、色々な気づきが得られます。

 

このようなことは、何も飲食店に限ったことではなく、さまざまな業種・業界にも当てはまります。実際に私がカーディーラーの店長だった頃、顧客の座る席に着いただけでも、さまざまな気づきが得られました。汚れ一つとっても、顧客目線で感じるところは全く違います。

 

店舗内の温度もその一つです。動いている従業員に合わせると、顧客にとっては寒すぎるというのは良くある話です。

 

自社の製品やサービスを顧客の視点から体験し、評価することは、顧客が直面する可能性のある不便さや欠点を発見し、それを改善する機会を得ることができます。

 

日常的にさまざま商品・サービスを受ける中で、提供者側が実際に顧客目線で考えているのか疑問に思うことがあります。顧客としてサービスを利用すれば、改善すべき点が一目瞭然になります。

 

例えば、オンラインでの買い物の際に、複雑な購入プロセスのため断念したことがある経験をお持ちのかたもいるのではないかと思います。複雑なプロセスや、不必要と思われる情報入力の要求は購買意欲を削ぎます。他にも、料金体系がわかりにくいことなどがあげられます。

 

数量の選択肢による不便さなどもそのうちの一つです。望まない数量を買わざるを得なかった場合や、その場では深く考えず購入したものの、後で気づく不便さなどは、実際に購入した人にしかわかりません。

 

これが、意図的に特定のターゲット顧客に対して戦略的に行われているのであれば、納得しますが…実際には、単に顧客目線の商品・サービス設計が欠如しているだけなのです。

 

これらの課題は、自動車販売の現場でも同様です。顧客が直面する問題の多くは、製造元や販売側の都合に起因しています。

 

製造元の都合では、例えば、複雑すぎるオプションと料金体系がある一方で、グレードとボディーカラーなどの組み合わせの不自由さなどがあげられます。車を購入したことがある方にとっては、そのように感じた経験の方が多いのではないかと私は考えます。

 

これは、顧客目線の商品設計の欠如と言えます。あくまで、コストや製造ラインなどに起因する生産者側の都合なのです。

 

そのような生産者側の都合を押し付けるような商品設計では、いずれ顧客から選ばれなくなってしまいます。顧客目線での商品・サービス設計が必要であり、あくまで顧客目線で考える必要があります。

 

この話は、販売・営業側でも同様であり、自社都合による一方的な押し付けは顧客目線で考えていると言えません。

 

顧客目線での商品設計とは、単に製品を売ることではなく、顧客のニーズに耳を傾け、それに応えることを意味します。そのためには、従業員が自社の製品やサービスを体験し、そのフィードバックをビジネスに反映させることが、顧客中心のビジネスを構築する上で極めて有効です。

 

従業員向けの割引制度や特別体験会などの仕組みは、このプロセスを促進します。たとえほんの少しでも、これまでと違った顧客目線を持つだけでまったく対応が変わります。

 

また、顧客のフィードバックを収集し、それをもとに商品開発やサービス改善を行うこは、顧客満足度を高める上で不可欠です。得られたフィードバックをもとに、それを共有、改善点を洗い出し、実行します。その結果、顧客のニーズや不満点を正確に把握し、それに応じた対策を講じることができるのです。

 

さらに、顧客サービスの質を向上させるために、従業員向けの定期的な研修を実施することも考えられます。特に、顧客目線を持つことの重要性に焦点を当てた内容を取り入れる方法もあります。

 

そして、重要なことは、フィードバックだけでなく、従業員が顧客体験に関するアイデアや提案、改善点を自由に共有できる仕組みが必要だということです。アイデアを個人レベルにとどめていては効果が限定的であるため、顧客満足度向上を目的とするミーティングなどの場が必要です。

 

このように、顧客に提供する価値を最大化し、顧客満足度を高めるためには、顧客目線を常に意識することが何よりも重要であると、店舗経営コンサルタントの私は考えます。

 

そのためには、顧客目線を忘れないための組織風土・文化の醸成が必要です。「顧客目線で考えること」を組織全体に浸透させる仕組みが必要です。

 

それを実現するためには、顧客目線でのビジネス運営を組織文化の一部として定着させる必要があります。よって、経営層からの強いコミットメントと、顧客中心の価値観を持ったリーダーシップが必要です。

 

つまり、リーダーが示すべき行動や姿勢、顧客目線を優先する文化を醸成するためのコミュニケーション戦略が重要となります。

 

さらに、顧客目線で考えるためには、市場や顧客のニーズが変化するにつれて、常に自社のアプローチを見直し、改善していく必要があります。顧客目線でのサービスや商品の設計は、一度きりの取り組みではなく、継続的なプロセスであります。

 

市場や顧客ニーズの変化に敏感であり続けること、そして常に改善を続ける姿勢が成功への鍵です。

 

当社が推進する「ストック型営業」の仕組みでは、持続的な売上の向上のために必要な、環境の変化に対応し、成果を上げる人材を育成する仕組みや、顧客目線で考えるために必要な組織風土・文化を醸成する仕組みを体系化しています。

 

貴社では、顧客目線で商品・サービスが提供できていますか?そのような商品・サービス設計ができていますか?

 

メールマガジン— 購読無料 —

コラム更新情報のほか、各種ご案内などを
お届けしています。ぜひご登録ください。