
「南澤さん、最近は新しいツールを次々と導入しているのですが、正直、現場が追いついていなくて……」―――これは、とある中小企業の経営者から聞いた言葉です。
ITツールやシステムの進化は、本当に目まぐるしいものがあります。便利そうだから、効率が上がりそうだからと導入してみたものの、現場では「使いこなせない」「結局、前のやり方に戻っている」という話は、決して珍しくありません。
最新の機器やシステムを導入することで、業務が効率化されるケースは確かに多いです。
一方で、使う側のリテラシーが追いついていなければ、かえって非効率になることもあります。南澤自身も、現場支援の中でそのような場面を何度も見てきました。
だからこそ、単に「新しいものを入れる」だけでは足りません。日頃から、社員一人ひとりのITリテラシーを少しずつでも高めていく取り組みが欠かせないのです。
昔は不要だったかもしれませんが、今は必須であり、もはや避けて通れないテーマだと感じています。
「今まで通りで何とかなる」
そう言える時代は、正直なところ、もう終わりつつあるのではないでしょうか。
環境変化に対応できない組織や企業は、静かに、しかし確実に市場から姿を消していきます。少し厳しい言い方かもしれませんが、これは現実です。
ただし、見方を変えれば、新しいツールや仕組みに目を向けているということ自体が、すでに「課題意識を持っている証拠」とも言えます。
そもそも、現状に何の不満も違和感もなければ、新しいものを取り入れようとは思いません。
「今まで通りで大丈夫」
「成果が出ないのは、頑張りが足りないだけ」
こうした考え方のままでは、行動は変わりませんし、結果も変わらないでしょう。
現状のままでは危うい、何かを変えなければならない――そう感じたとき、初めて人は新しいものに目を向けます。
これは企業や組織だけでなく、個人にも当てはまる話です。人は、現状に強い違和感がなければ、なかなか変わろうとしません。南澤自身の経験を振り返っても、「変わるきっかけ」は、たいてい居心地の悪さや危機感でした。
一方で、注意しなければならない点もあります。
それは、便利な機器やシステムに“依存しすぎない”という姿勢です。
かつて、カーナビが一気に普及した頃のことを思い出します。
確かに便利になりました。しかしその反面、「道や地名をまったく覚えなくなった」と感じた方も多いのではないでしょうか。
便利さを手に入れる一方で、能力やスキルが少しずつ退化していく。
こうしたリスクは、常に隣り合わせにあります。
最近では、タブレット端末を使った営業スタイルも当たり前になりました。説明の標準化が進み、誰でも一定レベルの提案ができるようになったこと自体は、決して悪いことではありません。
ただ、その一方で、ツールに頼りすぎてしまうと、言葉の選び方や伝え方を磨く機会が減ってしまうこともあります。
標準化が進めば進むほど、逆に「差別化」は難しくなっていくのです。営業として差別化を図るのであれば、なおさら言葉に磨きをかける必要があります。
ツールを使うからこそ、人としての伝え方が問われる――南澤はそう感じています。
だからこそ重要なのは、「使うか、使わないか」を冷静に選択する視点です。
能力やスキルが多少落ちると分かっていても、それ以上の価値があるなら使う。
逆に、リスクが高いと判断すれば、あえて使わないという選択肢を残す。
このバランス感覚が、とても大切だと南澤は考えています。
それでもなお、「新しいものに目を向ける姿勢」そのものは、企業にとっても、組織やチームにとっても、そして個人にとっても、欠かせないものです。
個人レベルであれば、現状維持は「成長が止まる」だけかもしれません。しかし、組織やチーム単位では、それはやがて「衰退」につながります。
新しいものに目を向けられる組織やチーム、個人は、必ずと言っていいほど、自分たちの課題を正しく認識しています。
だからこそ、変化を恐れず、新しいものを取り入れようとするのです。この「新しいものに目を向ける文化や風土」は、自然に生まれるものではありません。意図的につくり、育てていく必要があります。
変化の激しい時代において、旧態依然とした組織が生き残るのは、正直難しいでしょう。個人も、企業も、常に変化し続けることが求められています。
貴社では、新しいものに目を向ける文化や風土が醸成されていますか?
また、それを支える仕組みは整っているでしょうか。
さらに言えば、
新しいものを導入しているかどうか以上に、「新しいものを“使いこなせる組織”になっているか?」
ここが、これからますます問われていくはずです。
一度、立ち止まって考えてみる価値は、きっとあるはずです。
著:南澤博史
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