
「南澤さん、会社員時代と比べて一番良かったことは何ですか?」―――これは、独立前からご支援を続けている経営者と一杯やっている時の一言でした。
少し考え込んだ後、私はこう答えました。「自己決定感ですかね…」―――その経営者は「ほーっ、そうですか…」と、静かに唸りました。
すべてを自分で決断できること。
それは、会社員時代には到底得られなかった感覚です。組織内で役職が上がるにつれて意思決定の幅は広がりますが、同時にさまざまな制約も増えていきます。組織に所属する以上、どこかに限界があるものです。
ところが、独立して経営者になると、基本的にはほぼすべてを自分の意思で決断できるようになります。もちろん制約がゼロになるわけではありませんが、組織内にいる時とは明らかに違います。
会社を大きくして組織化すれば、再び制約は増えていきます。しかし、コンサルタント業を営む私にとっては、今のところ自由な裁量を享受できる環境にあります。この自己決定感は、モチベーションに直結します。
会社員時代、営業から店長へと昇格した際に感じた、自由に決められる喜び。その感覚が、独立後にはさらに大きなものとなりました。
もっとも、独立してすべてが順調だったわけではありません。むしろ、会社員時代とは比べものにならない不安定さと向き合う日々が続きました。
遡れば、2019年春。
私は中小企業診断士の資格を取得し、将来の選択肢を広げる中で、独立を目指す決断をしました。そこから約4年間、何度も自問自答を繰り返しながら準備を重ね、2023年4月に退職して独立への一歩を踏み出しました。
あの4年間は、外から見れば静かな期間かもしれませんが、私にとっては覚悟を固める大切な「心の準備期間」だったと振り返っています。
「本当にやっていけるのか」「後悔しないか」―――毎日のように問い続けた日々。しかし、迷った分だけ、覚悟は強くなりました。
独立後の2年間は、まさにストレッチゾーンに挑み続ける日々でした。会社員時代には経験できなかった「新しい仕事」「難しい仕事」に向き合い続け、副業で積み上げてきたコンサルティングや研修講師の経験が、本業になった瞬間、想像以上のスピードで成長を促してくれました。
「量は質を凌駕する」。
この言葉を、私は身をもって実感しています。かつて、毎日ひたすら行った飛び込み営業がそうであったように、場数を踏むことでしか見えてこない課題や成長の機会は、現実には無数にあります。
自己決定感の中でも最大の利点は、「自分の意思で働ける自由」にあります。働き方改革が進む中、会社員時代には制度やルールに合わせる必要があり、「もっとやりたいのに」「まだできるのに」と感じる場面も少なくありませんでした。
今は、誰にも制限されず、好きなだけ働き、好きなだけ挑戦できる環境があります。そして、それを誰のせいにもせず、自ら選び、責任を持つ。この自己決定感こそが、私にとっての最大のモチベーション源となっています。
もうひとつ、独立して得た新しい喜びがあります。それは、「移動」と「出会い」の楽しさです。若い頃、18きっぷで北海道を一人旅した経験以来、「知らない土地で過ごす時間」に特別な喜びを感じていた私にとって、今の仕事はまさに理想的な環境です。
もちろん、良いことばかりではありません。想定外のトラブルや、答えのない問いに直面する日々もあります。しかし、だからこそ、経営者の方々や受講者の皆様からの「ありがとう」という感謝の言葉は、何よりの報酬となります。
私が代表を務める南澤コンサルティングでは、「ともに伸びる」という理念を掲げています。これは、企業や人財が成長していくための“伴走者”として、目の前の課題に一緒に向き合い、単なる施策提案ではなく、仕組みづくりとその定着支援まで責任を持って関わる姿勢を示したものです。
独立してから自ら挑戦と成長を繰り返してきたからこそ、お客様の成長プロセスにも本気で向き合える。「一緒に悩み、一緒に走る」ことができる。
これが、当社の強みであり、私自身の喜びでもあります。実際の支援現場でも、「売上を伸ばす」だけではなく、それを支える人財・仕組み・文化を整えることに力を注いでいます。短期的な成果よりも、持続可能な基盤をつくること。それこそが、お客様と“ともに伸びる”ための確実な道だと考えています。
独立して見えた景色は、華やかさとは無縁です。しかし、地道な積み重ねの先に、確かな手応えがあります。
不安も、迷いも、挑戦も、すべて自分自身で引き受けるからこそ、手にした信頼や成果は、何物にも代えがたい価値を持っています。
そして今、改めて実感しています。常に難しい課題と向き合いながら、人に感謝され、頼りにされること。それが、私にとっての幸福感そのものであることを。これこそが、私がこの道を選んでよかったと心から思える理由です。
これからも、売上向上と人財育成の両輪を支えながら、一社、一人でも多くの「成長の伴走者」であり続けたいと考えています。
目の前のお客様と誠実に向き合い、ともに伸びる未来を、一歩ずつ築いていきます。
3年目も、どうぞよろしくお願いいたします。