第70話:決定することで得られる効果

 

「南澤さん、こんな変化の激しい時代に中期経営計画なんてつくっても意味がないと聞くのですが、実際のところどうなんでしょうか?」ーーーこれは、経営計画を策定中のクライアント企業の経営者からの一言でした。

 

近年では、名だたる大手企業でも中期経営計画を策定しないというケースが増えています。理由として挙げられるのは、環境変化が激しく、先を見通すことが難しいという点です。

 

では、果たして本当に中期経営計画は必要ないでしょうか?私自身の見解は「NO」であり、計画はないよりあった方が良いのは間違いありません。特に、ある程度の規模に成長した中小企業においては、単なる「参考」ではなく「必須」の存在と言えます。

 

計画の必要性

「変化が激しい中で、先を見通すのが難しい」という指摘に一定の理解はできます。しかし、だからと言って「5年~10年後などの未来の計画が不要だ」と考えるのは極端です。なぜなら、計画がないことのデメリットは計り知れないからです。

 

例えば、私自身の経験を振り返ると、営業時代には毎日一日の計画を立てていました。明日何をするか、どの順番で行うか、詳細な予定を組むのが日課でした。

 

しかし、計画通りに物事が進むことはほとんどありませんでした。突発的な仕事や緊急の依頼が飛び込んでくるため、スケジュールが乱れることが多々あったからです。

 

それでも計画を立てることをやめなかったのは、「計画がなければ、さらに混乱する」とわかっていたからです。

 

計画を立てていれば、突発的な仕事が入っても優先順位を付けて対処できます。また、未消化の仕事を翌日の予定に組み込むことで、柔軟に修正しながら進めることができました。

 

計画は決して完璧である必要はありません。重要なのは、「計画を立てる」という行為そのものです。これが、次の一手を見出すための基盤となります。

 

中長期計画の本質的な意義

環境の変化が激しいからこそ、中期的な計画は不可欠です。例えば、5年後や10年後の「あるべき姿」を決定することで、現状とのギャップが明確になります。

 

このギャップを認識し、それを埋めるための課題を設定することが、事業の方向性を具体化する第一歩です。

 

ギャップが明確になれば、それに対処するための行動が自ずと見えてきます。これが、いわゆる「課題設定」や「戦略策定」の土台となるのです。

 

また、社員にとっても「未来のあるべき姿」を共有されることは重要です。明確な目標が示されることで、自分がどのように貢献できるのかをイメージしやすくなります。

 

たとえ実現が困難な目標であったとしても、「ビジョンが示されている企業」と「未来が見えない企業」では、後者が選ばれにくいのは明らかです。

 

個人の「あるべき姿」と計画

企業だけでなく、個人にも同様のことが言えます。自分自身の「あるべき姿」を決定することで、行動の方向性が明確になります。

 

私自身も、「会社を設立する」と決めたことで、それに向けて行動が変わりました。もしその決断がなければ、現在の自分は存在していなかったでしょう。

 

人生においても、決断は行動を変え、未来を形作る重要な要素です。これはビジネスにおける計画と同じであり、未来の「あるべき姿」を描くことが、全ての始まりです。

 

「あるべき姿」を実現するための仕組み作り

では、貴社ではどうでしょうか。会社としての「あるべき姿」は明確でしょうか?従業員に対して、そのビジョンを示せているでしょうか?

 

目標を共有し、個々の社員がその目標に向けて行動する仕組みが整っていなければ、成長は難しいかもしれません。

 

企業が成長するためには、以下の要素が必要です。

1.中長期的なビジョンを持つこと

2.そのビジョンに基づいた中期的な計画を策定すること

3.  ビジョンを共有し、社員一人ひとりの行動に結びつける仕組みを構築すること

 

決定がすることで得られる効果

「決定すること」で得られる最大の効果は、「行動が変わる」という点にあります。そして、行動が変われば、結果も変わります。

 

例えば、ある中小企業では、中期経営計画を策定することで売上目標が明確になり、部門ごとの役割分担が進んだ結果、年次成長率が10%向上したというケースがあります。

 

具体的には、売上目標を部門ごとに分け、業務の優先順位を明確化した結果、営業活動の効率化が実現しました。結果的に、新たな店舗展開や人材雇用にもつながったのです。

 

計画そのものは環境変化に応じて修正されましたが、「未来を決める」という行為が行動を導き、成長を促したのです。

 

計画は万能ではありません。しかし、計画がないことで失うものは計り知れません。「未来を決める」ことの重要性を再確認し、その価値を貴社の成長や個人のキャリアに活かして欲しいと考えます。

 

企業においては、社員に向けてあるべき姿を示す必要があります。 例えば、ビジョンの共有会議や目標の掲示、経営陣からの直接的なメッセージ発信などを通じて、社員全員がその方向性を共有できる環境を作ることが重要です。

 

企業が成長するためには、そのようなあるべき姿を決定し、行動に移していく仕組みが必要となります。未来を決めることは、具体的な行動を生み出す原動力です。それが企業や個人に変革をもたらし、成長の新たな扉を開きます。

 

この機会に、貴社の「あるべき姿」を再確認し、それを実現するための中期計画を策定してみてはいかがでしょうか?社員一人ひとりが行動に移せる仕組みを構築することで、次なる成長を実現できるはずです。