第66話:「節目」の活かし方

 

「南澤さん、当社は来月で創業10年になります。これを機に大きく成長したいと考えていますが、手詰まり感があってご相談させていただきました」ーーーこれは、とある住宅関連の会社を経営する経営者の言葉でした。

 

創業10年という大きな節目を迎え、これまでの歩みを振り返るとともに、次の成長をどう実現するか模索する姿勢には学ぶべき点が多くありました。

 

このように「節目」を意識することで、新たな戦略を生み出す契機が得られます。反対に、「節目」を意識しなければ、惰性で日々が過ぎ去り、成長のチャンスを逃してしまう可能性もあります。

 

ある飲食店では、創業20周年を迎えた際に「全メニュー一新」という大胆な施策を実施しました。これより既存顧客を飽きさせない工夫をしつつ、新規顧客の取り込みにも成功し、売上は前年比で30%も増加しました。


一方で、ある小売業者は創業50周年という節目を迎えたものの、特別な施策は行わず、日常業務を惰性で続けました。結果として競合他社に市場を奪われ、業績は低迷し、回復には数年を要することとなりました。このように、節目を意識的に活用するかどうかが、その後の成長に大きな違いを生むのです。

 

今回のご相談は創業10年を機にしたものでしたが、「節目」を利用する考え方は企業だけでなく、個人にも役立ちます。

 

例えば、20代のうちに〇〇のスキルを身につける、30歳までに特定の役職に就くといったように、自分自身の節目を設定し、目標を立てることが重要です。

 

こうした目標があると、日々の行動にも変化が生まれます。目標がない状態では、ただ流されるだけの生活になりがちですが、具体的な目標があれば、それを実現するための努力が自然と促されます。

 

目標が達成されたときには、「やればできる」という成功体験が自己肯定感を高め、それがさらなる目標達成の意欲を生み出す。この連鎖を「成長のスパイラル」と呼ぶことができます。このスパイラルは、成功体験が新たな挑戦への意欲を生み、継続的な成長を支える原動力となります。

 

しかし、人生は計画通りにいかないことも多いものです。「目標に到達できなかった」「期待していたことが起きなかった」ときに、どう行動するかが、その後の成長に大きく影響します。

 

失敗や挫折を次の「節目」として活用し、改めて目標を設定し、努力を積み重ね続ける姿勢が大切です。そのように考えられる人は、着実に成長することができます。逆に言えば、そのように考えられない人は、残念ながら思うように成長できない可能性が高いと言えます。

 

このような「節目」を成長のきっかけにするマインドセットは、生まれつき持っているものではなく、多くの場合、経験から学び取るものです。マインドセットを持つ人は、持たない人と比べて明らかに行動が異なり、その結果も大きく変わります。

 

例えば、過去の成功や失敗を分析し、次に進むべき方向を見定める習慣を身につけている人は、節目を活用するのが上手です。一方で、ただ流れに身を任せている人は、せっかくの節目を生かせないことが多いです。

 

「節目」というと創業〇年や大きな記念日をイメージしがちですが、節目は何も特別なものだけではありません。毎日を「小さな節目」として考えることもできます。

 

例えば、今日一日のスケジュールを見直し、「やるべきこと」と「やらなくてもよいこと」を明確化するだけでも、生産性は大きく向上します。

 

「節目」というと大きなイベントを想像しがちですが、日常の中でも小さな節目を設定することで変化を生み出せます。

例えば、

朝にその日の目標を立て、夜に振り返る。

週末に1週間を評価し、翌週の計画を立てる。

月初に目標を再確認し、改善点を洗い出す。

このような工夫で、惰性に流されることなく、日々の積み重ねによって、大きな成果を出すための基盤を作ることができます。

 

何でもダラダラと惰性で続けている人は、大きな成果を出すことができません。成果を出す人は区切ることが、とても上手です。

 

経営者、店舗経営者としては、「節目」を上手に活用することで、企業、店舗を大きく成長させることができます。ダラダラと惰性で続けていては、大きな成果を出すことができないのは、個人だけでなく企業、組織もまったく同じです。

 

企業経営においても、節目は成長の大きなチャンスです。

・創業〇年を迎えたタイミングで新製品を投入する

・年度の切り替わりで新たな戦略を打ち出す

・売上〇円突破を達成した際に記念キャンペーンを実施する

これらは、いずれも節目を活用した成長戦略の一例です。節目を活用するポイントは「次に何をするか」を明確にし、具体的な行動計画に落とし込むことです。

 

節目は、成長のきっかけとして活用できる貴重なタイミングです。個人でも企業でも、惰性ではなく意識的に行動を選択し、変化をもたらすための目標設定を行うことで、飛躍のチャンスをつかむことができます。

 

貴社では、成長につながる「節目」をどのように活用していますか?次の節目に向けて、具体的な目標や計画を立ててみませんか?