「南澤さん、売上が上がり忙しくなればなるほど、効率性が落ちていく気がします…」ーーーこれは、とある飲食店の経営者の一言でした。
飲食店に限らず、売上が上がり業務が増えると、その分効率が悪化するというのは、多くのビジネスで直面する課題です。
私自身もカーディーラーの店舗で働いていた時は、営業時代から感じており、店長の時はさらに多くそのようなことを感じていました。
例えば、新車が多く売れると当然のことながら店舗に納車前の新車が増えます。スペースにゆとりのある店舗では、さほど問題ありませんが、都内の店舗はたいていスペース不足を抱えていました。
そのため、スペースが不足すると、場所の確保や入れ替えに時間がかかり、新車の受注台数が増えるたびに効率が悪化してしまうのです。
また、個人的にも契約に関する書類が手元に増えることで、効率が悪化するのを感じました。すぐに見つかる1件と選別する必要がある10件との差では大きな違いです。
多くの書類を適切に管理するためには、それなりの工夫がいります。いちいちその都度探して時間をロスしていては、効率が悪いからです。
そのため、配置や方法を考えて、瞬時に出したい書類がすぐにとり出せるように工夫をし、効率を上げることになります。つまり、効率性をアップさせるのです。
これまで、書類を取り出すのに数十秒~数分間かかっていたものが、常に数秒で取出せることで、大きな改善効果となり、効率性が良くなります。
そして、「効率性」が上がることで、「快適性」が高まります。「快適性」が高まることで、ストレス要因の減少も期待できます。細かいことと思われるかもしれませんが、これは決してばかにできるものではありません。
店舗レベルでも同様に、「効率性」を上げることで「快適性」が高まることも少なくありません。例えば、余分なものをなくし、導線を良くすることで、無駄な動きを省くことなどが考えられます。
その結果、「効率性」が高まることで、「快適性」も上がるわけです。そして、同様に店舗スタッフのストレス要因の減少にもつながります。
店舗経営コンサルタントの私としては、メンタル不調の人が多く発生する職場の共通点として、「現場の乱雑さ」も大きな要因であると考えています。
現場が乱雑で整理整頓されていないと、日々の業務をする上での効率性が悪化し、快適性が損なわれるのです。
業務を効率的に進めていく上では、必要な道具を揃えることも重要です。また、常に必要なものが不足しないようにすることも大切です。乱雑であると、不足しているものさえ気づかない場合も多いです。
余分なものをなくし、必要なものを揃えて、切らさないことが基本となります。さらに、効率性をアップするのであれば、一緒にできることを考えたり、順番を変えたり、簡単にできないかを考えることです。
店舗経営者や管理者は、このような効率性を上げる視点を持ちながら、現場の改善活動を続けていくことが求められます。
冒頭の話に戻ると、「効率性」と「快適性」を上げることで、売上が増加しても非効率的にならない工夫が必要です。
飲食店においても、売上が増えれば、食材の調達から管理、食器類の片付けなどのオペレーション等について考えなければなりません。
忙しい中でも効率性を保ちながら、いかに快適性を高められないかを考えることが重要です。清潔感が前提となる店舗においては、忙しいから乱雑で汚れているというわけにはいきません。
ところで、「効率性」についてですが、顧客視点も忘れてはいけません。何度か当コラムでお伝えしていますが、効率性を重視しすぎると、顧客にとっての快適性、満足度が落ちることもあります。
例えば、何度か話題にしている飲食店での注文時にQRコードを使用するなどです。このような方法は、店舗のコンセプトやターゲット顧客と合致していなければなりません。
高級志向の飲食店でQRコードでの注文システムを導入すると、顧客にとっての特別な体験が損なわれ、違和感を抱かれることがあります。
店舗の効率性を追求すること自体は重要ですが、それが顧客の快適性や満足度を犠牲にしてしまっては、逆効果になりかねません。
そして、たとえ同じ注文方法でも、店舗のコンセプトやターゲット顧客によっては、店舗の効率性と快適性が上がるだけでなく、顧客にとっても効率性と快適性が上がります。
大事なことは、自社の立ち位置を知り「顧客が何を求めているかを良く知らなければならない」ということです。店舗側の勝手な都合だけでなく、顧客にとっての価値を考慮する必要があります。
貴社は、「効率性」と「快適性」のバランスをどのように考えていますか?顧客の期待に応えつつ、自社の「効率性」と「快適性」を追求していますか?