「南澤さん、どちらの案が良いか、決めかねています…」ーーーこれは、テレビで取り上げられたパンケーキが人気となり繁盛している喫茶店の経営者からの相談でした。彼女は、勤怠やシフト管理システムの導入に際し、二つの案のどちらにするか決断を迫られていました。
聞くところによれば、数年前までは、スタッフが数名だったため手作業での管理が可能でした。店舗の繫盛に伴いパート・アルバイトが増えた結果、これまでのような属人的な管理方法では限界がきていました。そのため、店舗としてIT化を進めるために、2つの案のどちらかを選ぶ必要に迫られていました。
経営者という立場であれば、このような決断に迫られる場面は当然のことながら実に多いです。先ほどのケースでは、経営者が決断できず、私に意見を求めてきました。私自身は、それぞれの案のメリットとデメリットを詳細に説明しました。
最終的に責任を持つのは経営者です。決断をするためには、判断材料となる正確な情報が必要です。私は店舗経営コンサルタントとして両案のメリット・デメリットを説明し、最終的な決断を経営者に委ねました。
今回は、その材料を揃えるために、コンサルタントである私を活用したわけです。自分で材料を揃えるためには、それなりの知見と時間が必要になります。
信用できる情報かどうかは、ある程度正しい知見がなければなりません。正しい情報を得るためにはそれなりのコストがかかります。
過去に、IT化の遅れが業務効率の低下と競合への遅れを招いたケースがありました。IT化に遅れをとったために、業務効率が悪化し、競合に後れを取ることになった企業です。
その企業は、システム導入に関する決断を先延ばしにしていたために、結果的にコストが増大し、数年後にようやく導入に踏み切ることになりました。最終的に競合に追いつくのにかなりの時間を要したため、迅速な決断の重要性が改めて浮き彫りになりました。
ちなみに、決断をするための「意思決定プロセス」には、情報収集から分析、決断から実行という流れになります。
情報収集では、内部データや外部の市場動向を分析し、事実に基づいた情報を集める必要があります。ここでは情報収集力が成功のカギを握ります。それらの情報をもとに、メリットとデメリットの比較を行い、各選択肢の利点とリスクを詳細に評価します。
そして、リスク評価では、最悪のシナリオを想定し、それに対してどのような対策を講じるかを考えます。その後、実行と結果の検証を行います。決断後の実行プロセスを追い、結果を確認し、改善につなげます。
決断を下した後は、その結果をフォローアップし、適宜調整することが重要です。市場の状況が変化した時、予期せぬ問題が発生した場合には、柔軟に対応し、必要に応じて新たな決断を下す覚悟が必要です。
最終的には、正しい判断軸と正しい情報が揃って、はじめて正しい決断ができると言えます。経営者としては、決断をする際に正しい情報を収集するだけでなく、日頃から正しい判断基準、判断軸を持つように努力することが求められます。
正しい判断基準や判断軸は、一日で身につくものではなく、時間をかけて形成されるものです。当然のことながら、それらの判断軸は経営者によって異なります。何を優先するのかしないのか、やるべきこと、やらないことなどを決めておくことも挙げられます。
例えば、品質、価格(コスト)、納期、リスクなどの視点がありますが、これらをどうやって判断するかということです。
決断力がある経営者ほど、リスクに対する耐性を持っています。リスクは完全に避けることができませんが、予測し、計画を立てておくことで、被害を最小限に抑えることができます。
また、決断には常にリスクが伴いますが、失敗から学ぶ姿勢を持つことが重要です。失敗を恐れずに素早く決断を下す経営者こそ、次の成功のチャンスを掴みます。むしろ、失敗から学びを得ることで、次の決断がより的確になるのです。
リスクの大きさに応じてどの程度の対策を講じるか、迅速に判断できるかどうかが、成功と失敗の分かれ道です。
繰り返しになりますが、自社に合った判断基準、判断軸を持つことが、正しい決断を下すために不可欠です。
冒頭の経営者に対しては、判断軸が定まっていなかったので、今回は判断軸に対してのご指導も行いました。
判断基準、判断軸がしっかりと定まっていなければ、正しい情報が収集できたとしても正しい決断はできません。正しい決断をするためには、正しい判断基準、判断軸、そして正確な情報収集が必要となります。
決断力とは、単にスピードを追求することではなく、正確な情報に基づいて的確な判断を下す力です。そして、失敗を恐れず前に進む勇気が、経営者の最大の武器です。判断基準、判断軸を日頃から磨き、正しい決断を下せる準備を整える必要があります。
決断力は、ビジネスの未来を切り開くカギでもあります。日々の努力と経験が、最終的には成功をもたらします。決断力を磨き、常に最善の選択をする準備を整える必要があります。
貴社では、迅速かつ的確な決断を下すための判断基準や判断軸は整っていますか?正しい決断をするために、正確な情報を収集するための仕組みは整っていますか?