「南澤さん、今までとってきた方針を変えたいのですが、何か注意点はありますか…」ーーーこれは、これまでの販売方針を大きく変えようと考えていた経営者の一言でした。
「経営環境の変化や市場のニーズのシフトにより、時として従来の方針を見直す必要が生じることがあります。冒頭の経営者も、競争が激化する中で、現行の販売方針では十分に対応できないと感じ、新たな戦略を模索していました。
方針を大きく変更する際は、慎重な判断が求められます。なぜなら、変更の規模や内容によって、その影響は大きく異なるからです。
例えば、大きな方針や目標自体を変更する場合と、ただやり方を変えるだけの場合では、その影響範囲はまったく異なります。
大きな方針や目標をそのままにして、やり方を変更する場合は、あくまで目的地までの行き方が変わるだけです。
異なる道順をたどることになりますが、最終的に目指す方向は同じです。そのため、比較的容易に受け入れられます。
現場レベルでは、このような軌道修正が日常的に行われていることも少なくありません。適切に行われているチームは高い成果を上げますが、これが欠如しているチームは成果が出にくいです。
日常的に軌道修正を行うためには、改善を促進するための仕組みが必要です。そのような仕組みの中で、運営されるチームは相対的に高い成果を上げます。
冒頭の経営者は、販売の方針を大きく変えると言いましたが、最終的な目的地や目標を変えるわけではなく、やり方を大きく変えるということでした。
この場合、注意すべきは、従業員との円滑なコミュニケーションです。新たなやり方を導入する際には、全員がその意味と目的を理解し、一丸となって進めるよう十分な説明と指導が不可欠です。
最終的な目的地や目標の変更はありませんが、その変更の意味や意図を徹底的に理解させることが重要です。そのプロセスが不十分であれば、実行力が低下してしまいます。
問題は、大きな方針や目標の変更、すなわち「方向転換」を行う時です。最終的な目的地を変更する時です。
そもそも、本当にその変更が必要かどうかを慎重に検討する必要があります。安易な変更は、組織に混乱をもたらします。また、結果として弱い組織・チームを生み出します。
よく見られるのは、目標の変更です。特に数値目標の頻繁な変更は、混乱を招きやすいです。年間目標など中長期的な目標でないにしても、このような変更は安易に行われるべきではありません。目指すべきところを変える必要はないということです。
なぜなら、当初の目標が書き換えられてしまった段階で、正確な原因を分析することができなくなるからです。
「現状とあるべき姿のギャップが問題である」と、一般的には言われていますが、あるべき姿が書き換えられてしまうなら、正確なギャップを把握することができなくなるのです。
例えば、ある会社が年度初めに設定した売上目標があったとします。しかし、途中で目標が何度も変更された結果、最初に設定した目標と現状とのギャップが曖昧になり、最終的にはどこに問題があるのかが見えなくなってしまいました。このような場合、本来必要であった施策や改善策も見過ごされてしまう可能性が高まります。
外部環境の大きな変化がある場合などを除き、目標の安易な変更は現状の問題を正確に把握することを妨げます。
ある企業では、数値目標を頻繁に変更した結果、社員の士気が低下し、最終的には業績も低迷したというケースがありました。
このような理由から、安易な変更は避けるべきです。目標を変えるのではなく、やり方を改善することに注力すべきです。
とはいえ、外部環境の変化により、目的や目標を変更せざるを得ない場合もあります。その場合、やり方を変える時以上に、慎重な対応が求められます。全員がその意味と目的を理解できるように、より丁寧な説明、コミュニケーションが必要になります。
目的や目標が従業員に浸透していない場合、彼らはバラバラの方向に進んでしまいます。たとえやり方が違っても、同じ目的や目標に向かっていれば問題ありません。しかし、目的や目標がしっかりと浸透していないと、組織はまとまりを欠き、弱体化していきます。
経営側の視点だけでなく、従業員の視点から見ても、目標の頻繁な変更がどのように影響するかを考察することが重要です。従業員にとっては、明確な方向性がないとモチベーションが下がるリスクが高まります。
最終的に、組織が一丸となって目標を達成するためには、経営陣と従業員の間で共通の理解が必要です。この共通理解を深めることで、企業は外部環境の変化にも柔軟に対応できる強固な組織へと成長します。
貴社では、度重なる変更を避け、明確な目的や目標を設定していますか?そのような目的や目標を組織・チームの末端まで浸透させる仕組みがありますか?