「南澤さん、仕事の中でミスを減らすいい方法はないものでしょうか?」ーーーこれは、とある自動車整備工場の経営者の一言でした。
仕事をする上で、誰しもがミスを減らしたいと思います。特に、一つのミスが重大な問題に発展する可能性がある職種では、その重要性はより一層高まります。
自動車整備工場では、車の特性上、人命や安全を担うため、ミスは特に許されません。したがって、作業工程には安全を最優先に設計されており、タイヤ交換時にナットの締め忘れを防ぐ手順など、細かな工夫がされています。
例えば、作業中に外した部品やボルトの置き場などを明確にすることで、作業ミスを大幅に減らすことができます。事前にどこに置くということが、明確になっていれば確実に元に戻すことができます。
外した部品、ボルト等の置き場が決まっていない場合、戻し忘れのリスクが高まることは想像がつくのではないでしょうか?
同様に、工具の管理や使い方もミス減少に直結します。使った工具を都度元の場所に戻す人とそうでない人では、仕事の効率や品質が変わってきます。
都度いちいち戻すことは、一見効率が悪いと捉える人も多いのですが、私自身の経験では決してそんなことはありません。部分的に見るのではなく、総合的に見た時に、確実に効率が良いのです。
これは、何も自動車整備のような作業だけの話ではありません。事務的な作業でもまったく一緒です。事務机の上に文房具が散乱している人と、都度片付ける人では、作業効率やミスの発生率に違いが出ます。
多くのミスは、うっかりした勘違い・間違い・思い込み、決まった手順を踏まないこと、または、集中力の欠如などによるものです。
これらを完全になくすのは難しいのですが、効果的な対策としては、まず空間の整理整頓から始めることが挙げられます。
単純な話になりますが、整理整頓された空間と、“ごちゃごちゃ”に散らかった空間のどちらの方が、ミスが起きにくいか?という話です。当然のことながら、整理整頓された空間の方が、仕事がより効率的になり、ミスが起きにくくなります。
私自身も、自分の机の上の整理整頓、事務所、店舗全体まで、空間の整理整頓は優先課題として取り組んでいました。その結果、多くのミスを減らすことを実現していました。
事務所内では事務机を整理整頓し、整備士であれば工具箱などを整理整頓します。事実、整理整頓ができている人の方が、効率的に仕事をしていて、ミスも起きにくいのです。
これは、物理的な問題もありますが、それだけでなく頭の中の問題、心理的な問題も関係してきます。空間が整理整頓されていると、不思議と頭の中が“スッキリ”するのです。このあたりは、クリエイティブな仕事をされている方は特にこだわっていますが、それは他の職種にも当てはまります。
頭の中がスッキリしていると、集中力も発揮しやすくミスも起きにくくなります。一方で、頭の中がスッキリしていないと集中力も欠いてしまいます。
このような理由から、まずは空間の整理整頓が重要になります。目の前の空間が整理整頓されていることで、頭の中もスッキリし、集中力を発揮しやすくなります。
そして、ミスを起こさないようにという意味では、なんとも当たり前ですが「確認する」というのが大事になります。ただし、この「確認する」ということについて本当に工夫ができているのでしょうか?
ただ同じことを繰り返すのであれば、実はあまり効果が期待できません。なぜなら、人には同じミスをなぞってしまう傾向があるからです。例えば、計算ミスを防ぐために、足し算で求めた結果を引き算で確認するなど、逆の手順を使うことが推奨されます。
ただ単に確認作業を繰り返すのではなく、異なるアプローチで確認を行うことが、未然にミスを防ぐ鍵となります。常に違う方法で確認できないか?と考えることが重要であると店舗経営コンサルタントである私は考えます。
別の人に確認してもらうという方法もありますが、その点については、私はあまり推奨していません。二重の安心感が怠慢を招くリスクが高まるからです。
日常的な業務プロセスの改善で効果なのは、ミスを防ぐための工程を組み込むことです。それには、チェックリストを使用するなど、ただ同じことをなぞるのと違う工夫が必要になります。
このようなことを実現するためには、ミスを防ぐように工夫するスタッフの存在が欠かせません。このようなことができるスタッフの多くは、やらされ感で仕事をするのではなく常に自主的に仕事を行っています。
自主的に仕事を行うスタッフは、決められた作業をするだけでなく、常に業務改善を実施しています。そのようなスタッフを育成する仕組み、企業風土・文化が重要となります。
貴社は、仕事のミスを減らす工夫を行っていますか?そのようなことを実現するためのスタッフを育成する仕組みがありますか?