第43話:期待値を上回る接客

 

「南澤さん、うちの従業員はみんな接客がうまくて、これが当店の強みです」ーーーこれは、都心で居酒屋を数店舗展開する経営者の一言でした。

 

この店舗では、売上が順調に伸びており、人材不足に悩まされている経営者が多い中で人手を十分に確保することができています。

 

立地の良さや提供する料理の美味しさだけでなく、従業員のモチベーションの高さが良い接客へとつながり、売上の増加をもたらしていたのでした。

 

その店舗では、従業員の良い接客により顧客が満足し、喜んでもらえることで、さらに従業員の満足度が上がり、良い接客へとつながるという好循環を生み出していたのです。

 

何も特別なことを行っているわけではありません。型通りではない細かな気配りや一言が顧客の満足度向上につながっていました。

 

言葉では簡単に言えますが、これを実際に実現するにはさまざまな努力や工夫が必要です。やろうと決めて簡単にできるものでは決してありません。

 

型通りではない接客と言っても、実際には型通りの接客を身につけた上で発展したものであり、そのレベルに達するにはそれ相応の時間がかかります。

 

多くの店舗では、型通りの接客を身につけるまでが精一杯といったところでしょう。一歩進めばそれは他店との差別化につながります。

 

現在では、多くの店舗で新人販売スタッフは、「研修中」や「新人」といった名札やシールをつけています。これにより顧客の期待値を下げ、顧客満足度の低下を防ぐことができます。

 

逆に「トレーナー」や「店長」といった名札では、必然的に顧客の期待値が高まります。普通の接客では、なかなか満足してもらえません。

 

私自身も振り返れば、店長という名札をつける際は、接客にはより気をつけていたと感じています。そういう意味では、名札等に特別な役割を表記することは顧客だけでなく、本人にとっても重要な意味があることだと言えます。

 

一般的には、コンビニエンスストアやファミリーレストランなどのチェーン店の接客に対しての顧客の期待値はもともと高くありませんので、最低限のレベルを確保していれば問題はありません。

 

また、人手不足が常態化する飲食店では、タッチパネルやスマホの注文、セルフレジも当たり前になってきております。接客は必要最低限となり、この流れ自体は仕方がない部分もありますが、全ての店舗が導入してよいかは別の話なので、注意が必要です。接客以外で差別化が必要になります。

 

逆に言えば、これらの店舗で際立つ接客ができれば競争優位となる可能性もあります。スターバックスは、コーヒーチェーンでも接客を重視して成功していると言えます。しかしながら、当然のことながら顧客の期待値も上がりますので、それに応える必要があります。

 

飲食店であれば、料理の写真が立派すぎると期待値が上がり、実際の料理が出てきた時にがっかりするので、その塩梅が難しいところです。

 

顧客を引きつけるために見栄えの良い写真は必要ですが、実際に提供される料理とのギャップが大きいと満足度が大きく低下します。このような経験は誰しもあるはずです。

 

製品やサービスで顧客の期待値を常に上回っていくことが難しい中で、接客で顧客の期待値を上回ることは相対的に簡単であるとも言えます。

 

しかしながら、多くの店舗では接客による期待値を上回ることに対して力を入れているとは思えません。店舗経営コンサルタントとして、常日頃このあたりがもったいないと感じています。

 

大げさかもしれませんが、たった一言で顧客の期待値を上回ることができるのです。他にこのようなものを探すのが難しいです。

 

例えば、顧客の期待値を上回る接客では次のようなことが考えられます。それは、顧客の名前を覚えることであり、リコグニション(顧客認知)です。

 

名前を呼ばれることで顧客は特別感を感じます。例えば、常連のお客様の名前を覚えて、来店時に「こんにちは、〇〇様」と声をかけるだけで、そのお客様の満足度は飛躍的に向上します。小さな気配りが大きな差を生みます。

 

実際に、私自身カーディーラー時代には、顧客を名前でお呼びするということにこだわり店舗運営を行っていました。

 

たった一言でしたが、顧客との関係性強化やCS向上につながっていたことは疑いの余地がなく、どの店舗でもそのような仕組みを構築しました。

 

もう一つの例としては、それぞれの顧客に対してパーソナライズされた提案を行うということです。例えば、常連顧客の好きな料理や飲み物を覚えておき、「今日も〇〇いかがですか?」と提案することができます。

 

また、時には「いつもと違う〇〇はいかがですか?」と言った提案もできます。こうした細やかな気配りが、顧客の心に深く残り、売上やリピート率の向上にもつながります。

 

そして、もう一つ重要な極意は、「言われる前に動く」ということです。お茶やお水のおかわりを言われる前に用意するようなことです。要するに「気が利く」ことです。

 

これができるかどうかで、接客の期待値を上回ることができるといっても過言ではありません。

 

さらに、顧客からのフィードバックを積極的に取り入れることも重要です。アンケートや直接の意見を収集し、それを元にサービス改善を行うことで、顧客の期待を超えるサービスを提供することができます。

 

このように、接客における細やかな工夫が、顧客満足度の向上、ひいては店舗の成功へと繋がります。接客を通じてどれだけ顧客の期待を超えることができるか、日々の業務の中で考える必要があります。

 

接客により差別化ができれば、競争優位となることは間違いありません。これらは他社が真似をしにくいノウハウであり、製品やサービスの差別化と同時に力を入れるべきところです。

 

接客力が向上することで、顧客満足度が向上し、さらに従業員の満足度が向上する好循環を生み出す。人手不足の現代は、まさにこの仕組みが重要となります。

 

貴社では、接客により顧客の期待値を上回る工夫をしていますか?そのような仕組みがありますか?

 

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