第23話:「達成できる人」と「達成できない人」の違い

 

「南澤さん、あと1台という場面で、いつも決まって達成できる人と達成できない人がいます。この違いは何でしょうか?」これは、私がご支援している自動車販売店の経営者の質問でした。

 

自動車営業の現場で過ごした日々を思い返すと、月末など残り日数が少ない状況での「あと1台」のシナリオは数え切れないほど多く経験しました。決して自慢話ではありませんが、そうした局面で私は自分の真価を発揮できたと自負しています。

 

その動機は、単なる金銭的報酬を超えたものであり、営業としての誇りやプライドがかかっていました。達成できたときの満足感とできなかったときの落胆は、まさに天と地ほどの差がありました。

 

そのため、顧客に「今が買い替えの最高のタイミングです」と積極的にアプローチしたり、さらには、既に半年後や1年後に買い替えが決定しているお客様に対し、時期を前倒しで早めていただいたり・・・とにかく「何としても目標を達成しなければならない」という強い動機が、結果的に達成へと導いていたのです。

 

これらの努力が、必ずしも直接的な結果に結びつくわけではありませんでした。しかしながら、そうした必死な行動が不思議と最終的な成果に結びついていました。つまり、必死な行動が別のかたちで「あと1台を引き寄せる」のです。それが一体どういうことかは後に段々わかってきました。

 

重要なことは、達成に向けて強い意志があれば、それが具体的な行動へと繋がり、結果的に成功へ導くという事実です。「あと1台」の状況では、何かしらの行動を起こすことで、目標達成が可能になります。この単純ながら強力な原則は、常に真実でした。

 

さて、営業の現場では、「あと1台」という状況に直面したとき、達成したいと思う営業スタッフは、たいていどうしようかと悩み始めます。

 

実は、そのような場面では、あと1台という時の「検索」能力が問われます。つまり、ここでは受注確率が最も高い見込み顧客を順番に最適に「検索」できるかどうかにかかっています。確率が高いというところがポイントなので、「商談中以外も含む」のです。

 

特に、月末にあと1台という場面では、時間的な制約も多いため、「検索」の精度が高ければ、当然に成果が得やすくなります。逆に、「検索」の精度が低ければ、残念な結果で終わってしまいます。

 

そのため、「検索」が最大の効果を発揮するように、普段から営業スタッフの「脳内の検索エンジン」を最適化させる必要があります。そのためには、適切な「情報のストック化」が必要になります。この準備が、最終的に大きな成果につながります。

 

具体例には、普段から「どのような情報を収集するべきか?」と「どのように情報を活用すべきか?」の二つの戦略を立てて実行する必要があります。

 

そして、検索の効果が高ければ、高確率かつ最小の労力で「あと1台」を実現することができるわけです。ただし、そのような能力を発揮する以前に、目標達成の気持ちが弱ければこうした行動に実はつながりません。もちろん検索精度が低くても運が良い場合や、努力次第でも成果が出る場合があります。

 

具体的な行動につなげるためには、何よりも達成への強い意志が必要です。営業スタッフ一人ひとりが「何としてもやり遂げる」という強い動機を持つこと。そして、それは経営者や店長による熱心なリーダーシップから始まります。

 

経営者や店長という立場から見れば、営業スタッフ一人ひとりが「何とかしてやろう」という気持ちになるよう、熱量を持って彼らを鼓舞することが求められます。店舗全体の目標達成は、トップの熱意がスタッフに伝わり行動に移すことから始まります。

 

経営者や店長の思いが強ければ、それは他のスタッフに波及し、一人一人が何とかしてやろうという気になり、それが行動に変わります。その気持ち自体が弱ければ、残念ながら営業スタッフは行動に移せません。

 

結論として、個々の「検索」能力やスキル以前に、経営者や店長という立場の人が、「必ず達成させる気持ちを強く持たなければならない」ということです。決して、スキルや能力が明暗を分けるわけではありません。

 

結果的に、経営者や店長の思いや熱量が各営業スタッフに伝わることで、営業スタッフ自身の意思や気持ちを強くすることができます。そして、それが一人一人の行動につながります。そのため、経営者や店舗の責任者の熱量がいかに大切かとわかるかと思います。

 

私自身、店長という立場の時でも、「あと1台」という場面で様々なことに試みました。効果が高かった具体例としては、例えば、営業スタッフが抱えている商談に対して「検索」を行い、確率が高いところを狙い撃ちすることです。ここでは、現在進行中の店舗全体の商談中の顧客を「検索」することから始まります。

 

特に、営業スタッフが商談をしている顧客と自分に何らかのつながりがあれば(ここが重要ですが)、その顧客に対して営業スタッフからアプローチをさせます。具体的には、「店長に〇〇さんにお願いしてこいと言われました」と営業スタッフに言わせていましたが(笑)、若いスタッフほどその効果は絶大で、かなりの確率であと1台が達成できました。こうした行動も、達成への思いがあるから生まれるわけです。

 

話は少し逸れますが、「検索」機能は昨今、SFA(※営業支援システム) やCRM(※顧客関係管理)等のITツールの導入により、PCである程度のことはできます。顧客リストを特定の項目に絞って検索し、DMラベルの作成ができるなど、非常に便利です(もちろんExcelの顧客リストとWordの差し込み印刷でも簡単に出来ます)。

 

ところが、これらのITツールの「検索」機能は、あと1台で達成という状況では、まったくもって使えません。なぜなら、それらのツールでは基本的に「属性」での検索しかできないからです。年齢、性別、現在使用している商品の種類等、、、。「受注確率が高い顧客」というドンピシャの検索キーワードはありません。車ならせいぜい車検が近いくらいの話です。

 

仮に自動車という製品に絞れば、例えば、新型車が発売される時に「売れる営業スタッフ」が行なう顧客の「検索」は、決して「属性」検索ではありません。

 

では、どのような「検索」を行うのか?基本的には顧客の「好み」や「ライフスタイル」を検索します。「こういうデザインが好き」「こういう色が好き」とか「顧客の好みやライフスタイル」などから検索するのです。

 

「好み」などを理解して提案できるからこそ、顧客に「〇〇さん、本当に私のことわかってくれるよね~」という共感や信頼が生まれるわけです。

 

ですから、「情報のストック化」といっても、属性情報をいくらたくさんストック化したところで、残念ながら売上に対する寄与は限定的であり不十分です。情報の収集と活用の戦略が必要です。

 

今後、生成AIが発展し、SFAやCRMといったITツールに上手く導入されれば、劇的な変化を遂げる可能性があります。しかしながら、コスト面の問題や成果につながる高次元の「検索」が果たしてできるのか、疑問は尽きません。

 

そして、そもそもそのような高度なSFAやCRMといったITツールを、特に「経営資源が限られた企業で莫大なコストをかけて導入するか?」という話になります。業種によっても異なりますが「デジタル経営」は、お金をあまりかけずに、小規模な会社でもかなり色々な事ができます。

 

人材育成や店舗の内外観、機械設備などの装置に対する投資など、必要な投資は山ほどありますので、企業の外部環境、経営資源を考慮して優先順位をつけて戦略は立案しなければなりません。

 

繰り返しになりますが、成果を上げることに対しては、個々のスキルやツールを超えて、経営者や店長が強い達成意志を持つことが、営業スタッフの動機付けに大きく影響します。それが、一人ひとりの行動につながり成果を上げることができます。

 

また、仮にあと1台という状況が月初め、月中であれば、そもそも無理をして慌てる必要がありません。あと1台を考える必要もなく売上目標を達成させるのです。一部のトップセールスが行なっている営業手法です。

 

我々が推進する「ストック型営業」は先行受注を積み増す仕組みにより、そのような状況を目指します。それを個人の能力やスキルばかりに頼るのではなく、仕組みによって解決します。

 

貴社では、トップの思いや熱量を伝える場を持っていますか?また、情報収集や活用の戦略が整い、持続的な売上を確保するために必要な仕組みが整っていますか?