「南澤さん、若い時にはガンガン売っていたのに、年齢を重ねると落ち着いてしまうスタッフが多い傾向なのですが、一体どういうことでしょうか?」ーーーこれは、ある自動車販売店の営業部長の言葉です。
なんでも、入社から順調に売り続けていたものの、最近は売上がずっと低迷しているということのようです。
売上が低迷しているスタッフの背景には、単に技術的な問題だけではなく、モチベーションや個々のライフステージやライフスタイルの変化、将来のキャリアの展望等が関係していることもあります。
最も多いのは一時的な売上のスランプで、これは好調な売上によって地道な営業活動が減ってしまうことで起こるものです。つまり、売れるか売れないにかかわらず地道な営業活動が重要であるということです。
実は、このような事は常に起こり得るので、管理者はスタッフの営業活動量を確保できるように最善を尽くす必要があります。成果につながることに絞って管理する「最小限管理」が求められます。そのためには、成果につながらない無駄な管理項目は省き、適切な「KGIとKPI」の設定をする必要があります。これによって、一時的なスランプを防ぐことができます。
店舗経営者や店長は、スタッフの変化を理解し、それぞれのニーズに合わせたサポートを提供することが求められます。スタッフの士気を高め、売上を安定させるためには、日々のコミュニケーションが重要であり、スタッフの生活スタイルや価値観の変化に対応する必要があります。
また、売上が一時的な低迷であればそれほど深刻な問題ではありませんが、それが長く続くとなると話は別です。
そして、売上が長期にわたって低迷しているケースの場合の多くは、「芝刈り機の老朽化現象」が起きています。
これは、スティーブン.R.コヴィーの「7つの習慣」の中での「芝刈り機」の話に由来します。これは、芝刈り機を購入して何のメンテナンスもせずに使い続けて芝刈り機が故障する話で、機械を直すものの元のパフォーマンスを発揮できません。
つまり、成果を生む機械もずっと使い続けていれば老朽化していくので、日々のメンテナンスが必要であり、それを怠ると機械が壊れて使い物にならなくなってしまうということです。
そして、この話は単に物理的なメンテナンスに限らず、「人」に対しても同様であり、「育成」に通じるものがあります。
「人」で言うなら、売上を上げるために能力を発揮させるばかりだけでなく、「育成」を同時にしていかなければなりません。花を咲かせて実を取るだけでなく、根に栄養を与え続けなければならないのです。私自身、店舗経営コンサルタントとして、ここは非常に重要だと考えます。
具体的には、成長の喜び、そのための機会を与えること、継続的なトレーニングプログラム、定期的なミーティングやフィードバックなどがなければなりません。それは決まりきった一辺倒なものではなく、個々のスタッフのニーズに対応するためのカスタマイズされたアプローチが求められます。
売上を上げさせるだけの店長は、一見業績が良いので会社からは評価されますが、中長期的には決して全てを評価できるものではありません。栄養を与えずに実を取るだけでは、芝刈り機のようにいつか老朽化して使えなくなります。これが、長期にわたる売上の低迷の原因です。
さらに、この話は単に個人のレベルにとどまらず、人間関係やチームのメンテナンスにも通じるものがあります。
こうした「人間関係のメンテナンス」、つまり「人に対するケア」は、特に現代の多様で複雑な職場環境において、より重要性を増しています。多様な人材、それぞれの従業員が協力し合い、一致団結して目標に向かって働くためには、経営者や店長の繊細なケアが不可欠です。ここでは、効果的なチームビルディング活動や定期的なミーティングが重要となります。
実は、この売上と育成を考えてどうバランスをとってスタッフ一人一人の仕事に関与していくかは、非常に難しいところであり、店舗経営の要の部分でもあります。
そして、全員が自発的に協力する企業風土・文化は意図的につくることが可能です。具体的には、朝礼や定期的なミーティングを通じた日常のコミュニケーションを工夫することなどで、これらを実現することができます。
店舗経営者や店長が果たすべき役割の多面性については、単に業務の管理や指示だけではなく、チームのメンタルヘルスのケア、モチベーションの維持、そしてチームの目標達成への導きという、より広い視野でのリーダーシップです。
日々の業務をこなし、チームと個人が共に成長していくかは、店舗経営者や店長の役割に大きく依存しています。そのためにも、店舗経営者、店長自身が学び続け、進化し続けることが重要です。
また、店舗経営では、スタッフ一人一人の成長に目を向けることも重要です。売上を上げるだけでなく、スタッフの育成にも注意を払い、中長期的な視点で組織を育てていくことが求められます。
個人の成長に目を向けるためには、OJTによる現場任せではやはり難しく、OFF-JTなどを上手く活用することが効果的です。
個人の成長は組織全体の成長につながります。そして、組織全体が成長することで、個人に影響を及ぼすという好循環を生み出します。成長させてくれる組織という個人の認識は、企業に対する貢献意欲が高まり、高い成果や離職率低下にもつながります。
このように、個人の成長とあわせて組織が成長することで、大きな利益につながります。同様に、顧客もいますぐの短期的な売上をもたらす顧客だけに注力するのではなく、中長期的な利益をもたらす顧客を育てていかなければなりません。
貴社の経営戦略は短期的な売上の追求に偏っていませんか?中長期的な視点での人材育成にどのように取り組んでいますか?