第13話:顧客ニーズに応える「ワンストップサービス」の力

「南澤さん、大手ディーラーと比べて、我々の強みは、顧客が望むどんな車も提供できることです」―――これは、私が支援している車の販売店の社長の言葉です。

大手カーディーラーでは、特定のメーカーに特化しており、この社長のような独立系の販売店では、特定のメーカーを除き、様々なブランドの車を取り扱うことができます。

販売店の社長の話のように、顧客からの要望があればどんな車でも提供できるというのは、顧客満足度を満たすことができるため、大きな強みであります。専門性という点で若干の不安はありますが、それは販売店の努力次第で解決できるところでもあります。

私が以前在籍していた大手カーディーラー時代、顧客からは様々なメーカー、ブランドの車についてのご要望が寄せられました。これは、車に関する情報を一手に受ける仕組みを構築していた結果です。そして、契約から納車まで、私は可能な限り深く関与していました。

通常、他ブランドの車に関する顧客の要望は、他の店舗に紹介するか、もしくは積極的に介入し、見積りから納車に至るまでの過程に関与するかの二つのパターンがあります。

前者が基本ですが、実際には後者のアプローチを取る営業担当者もいます。しかし、このようなアプローチは一部の営業担当者に限られます。多くのカーディーラーでは、このような取り組みに対しては黙認していることが多いのが現状です。

後者のアプローチを取らない主な理由は、単純に手間がかかることです。自社の商品と同じレベルで他社の車種に精通する必要があり、これには相応の労力と時間が必要です。

しかし、このような取り組みにより、顧客は「どんな車も○○さんに頼めば大丈夫」と信頼を寄せるようになります。このような信頼関係が構築されると、非常に強固なものとなり、他のメーカーの営業が介入する余地をなくします。いわば「ワンストップサービス」が出来上がるからです。

また、他ブランドの営業担当者と相互に紹介し合うことで、販売台数が増加します。売れている営業担当者同士が連携することで相乗効果を生み、さらに販売台数を伸ばすことができます。これが、多くの会社が黙認する理由です。

さらに、他社の商品に精通することで、自社の製品知識が深まり、商品の長所と短所をより適切に理解し、顧客に適切なアドバイスを提供できるようになります。これは、冒頭の販売店が強調する強みの一つでもあります。

結局のところ、「ワンストップサービス」を構築することによって顧客のニーズに応え、顧客満足度を高め、強い関係を築くことが可能となります。私自身もそのような理由から、顧客の要望に応えて様々な車を提供してきました。

実際の経験から一つの事例を共有したいと思います。かつて、こんなことがありました。私のお客様である資産家の方がいらっしゃいました。その方は、もともとお客様の紹介により個人用に一台購入ご購入いただいていました。

その後、ご自身が経営している不動産会社で使用するため、送迎用に3台購入を考えているという話を伺いました。当然に自社の商品を提案しようかと思いましたが、その時はスライドドアで送迎用として向いている他社の商品「〇〇」を購入したいということでした。当時はコンパクトなスライドドアの車が非常に限られていました。

では、私の方で任せていただければ手配しますということで、見積りから契約、納車までかなり深く関与しました。無事に3台の納車が終わった当日、ほっとしたその時、社長から「もう一台買うことにしたから、南澤さんのところで扱っている〇〇、オプションで〇〇と両ドアの看板つけていくらで用意できる?」という驚きのお言葉。

こうして、自社の製品も無事にご購入いただく流れとなりました。もし、深く関与していなければ、もう一台も他社になっていた可能性が高いと考えます。実は、この時のやりとりは別の理由でも、私の中でもかなり印象の深い出来事でしたが、それについてはまたの機会にお話したいと思います。

この経験から学んだ重要な教訓は、顧客の要望に対してすぐに諦めるのではなく、できる限り柔軟に対応することによって、長期的な顧客関係を築くことができるということでした。その時の1台だけでなく、その後社長がお亡くなりになるまでの20年超にわたって長期的な関係を築くことができました。

一般的には、ワンストップサービスといえば、小規模な医療機関が大学病院への紹介をせずにすべての診療を行うことや、製造業が外部の製造業者に頼ることなく、全ての製造工程を自社で完結させることなどが挙げられます。しかし、業種・業界によってその内容は異なります。

もちろん、ワンストップサービスが常に最適とは限らず、自社のリソースや外部環境に応じた戦略的な判断が求められます。その上では自社の置かれている状況を適切に把握することが不可欠となります。そして、そのようなワンストップサービスが取り入れられないかを考える必要があります。貴社ではどのようにワンストップサービスを活用できるでしょうか?

現状を分析し、自社の位置を正確に把握することは、適切な戦略を立案する上で不可欠です。状況に応じた適切な戦略を選択することが成功への鍵となります。

我が社が推進する「ストック型営業」の仕組みでは、まずは客観的な視点で現状分析から始め、最適な戦略を策定していきます。このアプローチにより、貴社にとっての最適な戦略を策定することが可能となり、事業発展に貢献することができると考えます。

貴社の経営資源と外部環境といった現状はどうでしょうか?