◆第148話:「〇〇と言えば」で思い出される存在になる方法 ~会っていなくても思い出される仕組み~

  

「南澤さん、どうして同じ営業担当なのに、お客様から真っ先に思い出される人と、そうでない人がいるのでしょうか?」―――これは、複数店舗を展開する自動車販売会社の経営者からいただいた質問です。

 

営業という仕事は、毎日お客様と会っているようでいて、実際には数か月、場合によっては一年以上お会いしないことも珍しくありません。

 

それにもかかわらず、「車を買おう」「そろそろ点検を受けよう」と思った瞬間に真っ先に思い出される営業担当がいます。一方で、以前購入したにもかかわらず、まったく思い出されない営業担当もいます。

 

この違いは、一体どこにあるのでしょうか。

南澤自身、営業時代はどちらかと言えば前者だったと思います。

 

「南澤さん、本当は『ご無沙汰しております』なんだけど、不思議と、この前会ったばかりのような気がするんですよ。」

 

そんな言葉を、お客様から何度もいただきました。

 

「久しぶりなのに久しぶりな気がしない。」

「いつも近くにいるような気がする。」

 

もちろん、実際に頻繁にお会いしていたわけではありません。しかし、振り返ってみると、営業時代から一つだけ意識していたことがあります。

 

それが、「思い出していただくための仕組み」をつくることでした。

 

車と言えば南澤。困ったら南澤。買い替えるなら南澤。

そのように、お客様の頭の中で自然に結び付く状態をつくることです。

 

そのために特別なことをしていたわけではありません。定期的なお電話やDM、季節のお便りなど、一つひとつは決して特別な取り組みではありません。しかし、その小さな積み重ねが、お客様の記憶の中に残り、「〇〇と言えば南澤さん」と自然に思い出していただける関係を築いていたのだと思います。

 

ここで重要なのは、「接触回数が多ければよい」という話ではないことです。

 

営業には絶妙な距離感があります。接触が多すぎると「しつこい」と感じられます。しかし、その一歩手前であれば、「熱心ですね」と受け取っていただけます。営業は、まさに紙一重なのです。

 

南澤自身も営業を続ける中で、お客様ごとの最適なタイミングを少しずつ身につけていきました。そして、その経験はノウハウとして蓄積され、営業活動の大きな財産となっていったのです。

 

つまり、「思い出される存在」は偶然生まれるものではありません。

日々の積み重ねによって、意図的につくられるものなのです。

 

この考え方は、営業担当者だけに必要なものではありません。

 

店舗も会社も同じです。

「車と言えば、あのお店。」

「印刷と言えば、あの会社。」

「困ったら、あそこに相談しよう。」

 

そのように真っ先に思い出していただける存在になることが、これからの時代ますます重要になるのではないでしょうか。

 

マーケティングの世界では、このような状態を「第一想起」と呼びます。つまり、「〇〇と言えば、あの会社」と最初に思い浮かべていただける状態です。

 

誰もが知っている有名企業や有名商品が、忘れた頃に広告を目にすることがあります。それは商品を売り込むことだけが目的ではありません。

 

思い出していただくこと。

その状態を維持することも、大きな目的なのです。

 

もちろん、何も全国的に有名になる必要はありません。

店舗型ビジネスであれば、地域の中で第一想起を築くことができれば十分です。

 

地域のお客様から、「〇〇と言えば、あのお店」「〇〇と言えば、あの会社」と自然に思い出していただけることが、大きな競争力になります。

 

そして、この状態は顧客だけに影響するものではありません。

採用にも大きく影響します。

 

「あの会社で働きたい。」「あの会社なら安心できそう。」

そのように思い出される会社ほど、人も集まりやすくなります。

 

人手不足の時代だからこそ、「選ばれる存在」である前に、「思い出される存在」であることが、大きな経営資源になるのです。

 

ただし、それを一人の営業担当や一部のスタッフの努力だけに頼っていては長続きしません。

会社として継続的に思い出していただくためには、仕組みやしかけが必要です。

 

定期的な情報発信、顧客フォロー、イベント、地域活動など、組織全体で積み重ねていく仕組みです。

そして、南澤が特に重要だと考えているのは、その仕組みが人を育てるということです。

 

多くの企業では、「人を育ててから仕組みを回そう」と考えがちです。

しかし、実際にはその逆であることも少なくありません。

 

仕組みやしかけがあるからこそ、誰でも自然と行動できるようになります。

その行動を繰り返すことで習慣が生まれ、人が育っていくのです。

 

育成をしたからできるようになるのではありません。

仕組みやしかけがあるからできるようになり、その結果として人が育っていくのです。

 

つまり、「思い出される存在」をつくることは、単なるブランディングやマーケティングの話ではありません。

 

組織づくりであり、人材育成そのものなのです。

 

思い出される会社には、思い出される理由があります。

 

その理由は、優れた広告や一時的なキャンペーンだけではありません。

 

日々の地道な積み重ねを続けられる仕組みがあるからこそ、会っていなくても思い出していただける存在になるのです。

 

貴社では、「〇〇と言えば貴社」と真っ先に思い出していただけるような取り組みをされていますか。

また、そのような状態を継続的につくり出すための仕組みやしかけがありますか。

著:南澤博史

 

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