◆第144話:当たり前を書き換える ~成長している組織が実践していること~

 

「南澤さん、なぜ同じ自動車販売業なのに、あの会社だけ次々と新しいことに挑戦できるのでしょうか?―――これは、ある自動車販売会社の経営者からいただいた質問です。

 

南澤自身、この問いについては店長時代から考え続けてきました。実際に業績が伸びている会社を見ていると、商品や立地、規模だけでは説明できない差があります。その差を生み出している要因の一つが、「当たり前」を見直す力です。

 

当社のコラム第142話「当たり前を疑う習慣」でもお伝えしましたが、成長するためには当たり前を疑うことが重要です。特に、過去の成功体験を疑うことの大切さについて触れました。

 

しかし今回は、もう一歩踏み込みたいと思います。それは、「当たり前を書き換える」という考え方です。

 

当たり前を疑うことは変化の入口です。しかし、疑っただけでは何も変わりません。実際に新しい基準へ置き換えて初めて成果につながるのです。

 

営業の世界では、トップセールスに成功の秘訣を聞くと、「特別なことはしていません。当たり前のことをしているだけです」という言葉が返ってくることがあります。南澤も営業時代から何度も耳にしてきました。

 

しかし、この言葉には大きなヒントがあります。本当に重要なのは、「何を当たり前としているか」なのです。

 

同じ仕事をしていても、人によって当たり前の基準は異なります。お客様に連絡するのは必要な時だけ。お客様には定期的に連絡するのが当たり前。お客様の変化を先回りして確認するのが当たり前。

 

この違いは、その場ではほとんど差が見えないかもしれません。しかし一年後、三年後になると大きな差となって表れます。つまり、成果の差は能力の差だけではなく、当たり前の基準の差でもあるのです。

 

南澤自身も店長時代に何度も当たり前を書き換えてきました。例えば、車検や点検の予約です。

 

以前は、前月までに予約をいただければ十分という考え方が一般的でした。しかし競争環境が変化する中で、それでは遅いと感じるようになりました。

 

そこで、「車検や点検は3か月前に予約する」。さらに、「半年先まで予約する」という基準へと書き換えていったのです。

 

すると何が起きたか。予約の安定化だけでなく、顧客との関係性そのものが変わりました。先行して予定を押さえることが当たり前になれば、競合他社に入り込まれる余地も小さくなります。

 

まさに、当たり前を書き換えたことによる成果です。言い換えれば、当たり前を書き換えるとは、基準を書き換えることでもあるのです。

 

ここで重要なのは、成長している組織ほど現状を疑う視点を持っていることです。

 

「今うまくいっているから大丈夫」ではありません。むしろ、「今うまくいっているからこそ見直す」という考え方を持っています。

 

現状維持を目指しているように見えて、実際には現状維持こそが最大のリスクになることも少なくありません。なぜなら、環境は常に変化しているからです。

 

最近で言えば、AIの普及はその典型例でしょう。数年前であれば、「AIを使ったことがある」だけでも先進的でした。しかし現在は、「AIで情報収集をする」のが当たり前になり、さらに「AIで提案書を作成する」ことが当たり前になりつつあります。

 

つまり、社会全体の当たり前が書き換わっているのです。当たり前の基準が変われば、求められる行動も変わります。

 

目標に対しても同じことが言えます。目標未達が当たり前の組織。目標達成が当たり前の組織。目標を上回ることが当たり前の組織。

 

どの状態を当たり前とするかによって、日々の行動は大きく変わるのではないでしょうか。

そして、その差は結果だけではありません。行動も同じです。

 

南澤の営業時代は、

「毎日30件訪問する」

さらに帰宅する前には、

「毎日DMを30通送る」

そのような行動が当たり前でした。

 

もちろん簡単なことではありません。しかし当時の南澤は、それが普通だと思ってやっていました。

一方で、そのような行動を当たり前としていない営業スタッフも数多く見てきました。

 

当然ながら、長い時間が経つと差は広がっていきます。

結果の差は、能力の差だけが原因とは限りません。

どのような行動を当たり前としているか。その基準の違いが、大きな差を生み出しているのです。

 

そして、当たり前を書き換えるためには個人の努力だけでは限界があります。組織として定期的に見直す仕組みが必要です。

 

経営計画。人事評価制度。会議やミーティング。教育や研修。これらは単なる制度ではありません。組織の当たり前を書き換えるための重要な仕組みでもあるのです。

 

新しいことに挑戦し続ける組織には共通点があります。それは、変化を歓迎する文化があることです。そして、その文化を支える仕組みがあります。

 

文化だけでは続きません。仕組みだけでも定着しません。両方がそろって初めて、当たり前は書き換わっていくのです。

 

結果として、成長している組織は特別なことをしているように見えるかもしれません。しかし実際には、過去の当たり前を少しずつ書き換え続けているだけなのかもしれません。

 

その積み重ねが、やがて大きな差となって表れるのです。

貴社では、今の当たり前を見直す機会がありますか?

そして、組織として当たり前を書き換える仕組みや文化が根付いているでしょうか?

著:南澤博史

 

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