◆第136話:人の異動が多い会社は成長する ~人事異動の少ない会社は成長が止まる~

 

「南澤さん、うちの会社は人の異動がほとんどないのですが、それって問題なんでしょうか?」―――これは、ある企業の経営者からいただいたご相談です。

 

人の異動が少ない。

 

一見すると、安定していて良い状態のようにも見えます。長く同じメンバーで仕事ができ、人間関係も固定され、業務も慣れている。効率も良さそうに感じます。

 

しかし――本当にそうでしょうか。

 

現場を見ていると、異動が少ない組織ほど、ある違和感が生まれているケースが少なくありません。それは、「変化が起きない」ということです。

 

業務は回っている。問題も表面化していない。けれども、改善が止まっている。新しい発想も出てこない。静かに停滞が始まっているのです。

  

この問題の本質は、「異動の有無」ではありません。その背後にある“構造”にあります。

 

ここで一つ、現場でよく見かける特徴があります。スペシャリストが多い組織ほど、静かに停滞が始まっている。

 

一見すると優秀な人材が揃っているように見えます。しかし、その多くは「その人にしかできない仕事」を抱えている状態です。

  

組織には大きく分けて2つの状態があります。「人に業務が紐づいている組織」と、「業務が仕組みとして存在している組織」です。

 

異動が少ない組織の多くは、前者です。

 

同じ人が長く担当することで、仕事はその人のやり方に最適化されていきます。一見すると効率的ですが、その裏で属人化が進みます。

 

その人がいなければ回らない。だから動かせない。

 

ここで、あえて強く申し上げます。異動ができないのではありません。動かせない構造を放置しているだけです。

  

では、どうすればよいのでしょうか。

 

鍵になるのが、「意図的なローテーション設計」です。人が動くことを前提に、あらかじめ配置を設計しておく。

 

短期的には、本人の負担が増える場面もありますし、現場が一時的に非効率になることもあります。正直なところ、混乱が起きることもあるでしょう。

 

それでも、ここを避けていては前に進みません。

 

設計されていないローテーションは単なる人の入れ替えです。設計されたローテーションだけが、組織力を高めます。ローテーションが機能し始めると、状況は変わります。

 

繁忙と閑散に応じた柔軟な配置ができるようになり、急な欠員にも対応できるようになる。結果として、組織全体の対応力が高まります。これは単なる配置ではなく、「組織力そのもの」の強化です。

 

さらに重要なのが、「属人化の強制分解」です。

 

長くいる人や経験が豊富な人ほど、知らず知らずのうちに業務を抱え込みます。そして、その業務は“その人でなければできない仕事”に変わっていきます。

 

ここを放置すると、組織は確実に動けなくなります。

 

だからこそ、意図的に分解する必要があります。業務を洗い出し、分解し、誰でもできる形に再構築する。場合によっては、あえて担当を外すことも必要です。

 

当然、現場は混乱しますし、本人の抵抗もあります。

しかし、それを乗り越えなければ、組織は前に進みません。

  

一方で、人の異動が多い組織はどうでしょうか。

 

人が入れ替わる前提で仕事が設計されています。誰がやっても一定の成果が出るように仕組み化され、ノウハウも共有されている。だからこそ、人を動かすことができるのです。

 

そして、もう一つ見逃せないポイントがあります。

 

人が動くことで、「違和感」が生まれます。新しく来た人は、「なぜこうなっているのか」と疑問を持つ。この違和感こそが、改善の起点になります。

 

南澤自身も、店長時代に複数の店舗を経験しました。

 

異動するたびに、「やり方の違い」に触れてきました。良い部分は取り入れ、変えるべきところは変える。この積み重ねが、確実に成長につながりました。

 

逆に、同じ場所に居続けるとどうなるか。

 

変化に気づきにくくなります。いわゆる「ゆでガエル現象」です。少しずつの変化が当たり前になり、違和感が消えていく。これが最も怖い状態です。

 

ここまでを整理すると、人事異動の役割は明確です。

 

属人化を防ぎ、業務を仕組み化し、違和感を生み出し、改善を促進する。つまり、人事異動は単なる配置転換ではなく、組織を動かすための“仕組み”なのです。

 

南澤が一貫して重視しているのは、人に依存しない構造をつくることです。誰でも機能する仕組みを整える。その前提として、人が動く設計が必要になります。

  

さて、ここで改めて考えてみてください。

 

貴社では、人の異動を前提とした構造になっているでしょうか。業務は人に紐づいていないでしょうか。

そして――その構造のままで、本当に変化に対応できるでしょうか。

著:南澤博史

 

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