◆第112話:ムダな会議を意味のある会議にする方法

  

「南澤さん、うちの会議はなんか盛り上がりに欠けていて…」ーーーこれは、とある販売店の経営者を含めた幹部の方々の言葉でした。

 

「盛り上がらない」というのは、意見が出にくいという意味でしたが、そもそも会議は“盛り上がる”必要があるのでしょうか? 少し立ち止まって考えてみる価値があります。

 

もし会議の目的が「盛り上げること」なら、それは本末転倒です。けれども、会議の目的が「意思決定」や「情報共有」であれば、必ずしも盛り上がる必要はありません。むしろ、静かで淡々としていても、明確な結論が出る会議のほうが生産的です。

 

私が伺った企業の会議は、内容を聞けば「情報共有型」でした。意見が出ないのも当然で、情報を整理して共有するのが目的であれば、それで問題はありません。

 

一方で、ブレインストーミングのように「発散型」の会議で意見が出ないとしたら、これは深刻な問題です。参加者がただ座って時間を過ごすだけの“ムダ会議”になってしまいます。

 

発散型の会議を活性化させるポイントは、事前準備にあります。多くの会議で見られるのは、当日配布された資料を初めて目にする光景です。これでは、意見を出せと言われても出るはずがありません。

 

事前に資料やテーマを共有しておくことで、参加者は考える時間を持てます。ほんの少しの準備が、会議全体の効率を劇的に高めます。

 

もう一つ、見落とされがちな要素が「進行役=ファシリテーターの力量」です。

ブレインストーミングにはルールがあります。批判をしない、質より量を重視する、自由奔放な発想を歓迎するーーーこうした基本ルールを理解していなければ、意見は広がりません。

 

進行役が上手にリードすれば、最初は遠慮していたメンバーも次第に発言し始め、場のエネルギーが生まれます。逆に、進行が硬直的であれば、誰も口を開かなくなります。

 

一方で、「収束型」の会議では、発散とは逆に“決める力”が求められます。

ここでありがちなのが、「声の大きい人」や「立場が上の人」の意見だけで物事が決まってしまうケースです。

 

これは、最もムダな会議の典型です。参加者は「どうせ決まっている」と感じ、次第に発言をやめてしまいます。その結果、組織は硬直化し、意思決定の質が下がっていきます。

 

意思決定型の会議で重要なのは、判断基準を明確にすることです。

何を優先するのか、何をもって良しとするのか。基準が曖昧なままでは、結論も曖昧になります。

 

異なる意見が出たときこそ、各意見を公平に扱い、納得感を持てる形で結論を導く必要があります。たとえ採用されなかった側の意見であっても、きちんと傾聴し、尊重する姿勢が求められます。

 

決められない会議ほど、組織の生産性を奪うものはありません。

現代のように環境変化が激しい時代において、「決めないこと」は最大のリスクです。一定の議論を尽くしたら、リーダーが責任をもって結論を下す。この「区切りをつける力」が、組織を前に進めます。

 

もちろん、最終的な決定方法は多数決でも責任者判断でも構いません。大切なのは、そのプロセスに納得感があるかどうかです。議論の過程を大切にすれば、たとえ結果に不満が残っても、チームの一体感は失われません。

 

さらに、意味のある会議にするために欠かせないのが、「聴く力」と「考える力」を持つ人材の育成です。異なる立場の意見を聴き、全体を俯瞰的に多面的に捉えることができる人が多いほど、会議は深まり、決定の質が上がります。

 

逆に、自分の立場だけでしか物事を見られないメンバーばかりだと、議論は噛み合いません。結果的に、決まらない・進まないという悪循環に陥ります。

 

「判断基準を持ち、他者の視点で考えられる人を育てる」こと。これが、会議の質を根本から変える最も確実な方法です。

 

古典『中庸』に「反ってこれをその身に求む」とあります。

的を外したときは、弓や風のせいにせず、自らを省みよという意味です。

 

会議の質も同じです。「意見が出ない」「決まらない」と嘆く前に、自分たちの進め方を見直すこと。そこに改善の糸口があります。

 

ムダな会議をなくす最も確実な方法は、目的を明確にすることと、参加者の意識を変えることです。

そのためには、「なぜこの会議を開くのか」「何を決めるのか」「終わった後に何が変わるのか」を冒頭で明示することが大切です。目的が明確であれば、会議は短く、濃く、意味のあるものに変わります。

 

貴社の会議は、目的が共有され、納得感のある結論に至っていますか?

そして、会議を通じて「多面的に考え、判断できる人」を育てる場になっていますか?

日々の会議のあり方を見直すことが、組織の成長スピードを大きく変える第一歩になるはずです。

著:南澤博史

 

◆音声でお楽しみいただけるポッドキャストのご案内

 ▶ ポッドキャストはこちらから(※Spotifyアプリをお持ちでない方)
https://cdn1.genspark.ai/user-upload-image/8/5c1da9e8-7a42-4d9c-8907-da6466a079e3.mp3

  ※Spotifyアプリをお持ちの方はぜひこちらから                                  → https://open.spotify.com/episode/5ooPPE5UUYewG8Q3ORceJI?si=1i53RLU2SiWBSO_kOe9K3Q